Scene 12 · Notes

解説 場面 12「写真好きの癖」

この場面の解説

ウィルソンは、助手の欠点は写真に夢中なことだと話す。カメラで撮っては地下室にもぐって現像しているが、全体としてはよく働き、悪い遊びもしない男だという。ホームズは、その助手が今も店にいるのかと尋ねる。

表現・文法のポイント

Never was such a fellow for photography
否定語 Never を文頭に出した倒置で、There never was such a fellow ... を縮めた口語的な形。a fellow for ~ は「~に目がない男」。「あれほど写真に夢中な男はいない」と、あきれ半分に言っている。
when he ought to be improving his mind
ought to ~ は「~すべきだ」。進行形の be improving と合わせて「本来なら~しているべき時に」。improve one's mind は読書などで教養を高めること。勉強もせずに写真ばかり、という年配者らしい小言だ。
like a rabbit into its hole
直前の diving down into the cellar に添えた比喩で、動詞 diving が省かれている。ウサギが巣穴へさっともぐり込むように、助手がすばやく地下室へ消えていく様子を表している。
I presume
presume は「(根拠をもとに)推定する」。文末に添えた I presume は「~だと思うが」「~ですね?」という確認の言い方で、相手に念を押す丁寧な響きがある。

背景・時代

写真の現像(developing pictures)
当時の写真は、ガラスの乾板に撮影し、暗い部屋で薬品を使って現像した。1880年代の終わりには手軽なカメラが出回り、アマチュア写真が流行していた。地下室は暗室にするのにうってつけの場所だった。

全文の対訳

"Oh, he has his faults, too," said Mr. Wilson. "Never was such a fellow for photography. Snapping away with a camera when he ought to be improving his mind, and then diving down into the cellar like a rabbit into its hole to develop his pictures. That is his main fault, but on the whole he's a good worker. There's no vice in him."

「いや、あの男にも欠点はありますよ」とウィルソン氏は言った。「あれほど写真に夢中な男はいませんね。本でも読んで頭を磨けばいいときにカメラをぱちぱちやっては、ウサギが巣穴に飛び込むみたいに地下室へもぐり込んで、写真を現像しているんです。それが一番の欠点ですが、全体としてはよく働く男です。悪い遊びもしませんしね」

"He is still with you, I presume?"

「その男は、今もあなたのところにいるのだね?」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • photography(フォトグラフィー)… 写真(を撮ること)・写真術
  • improving(インプルーヴィング)… 向上させる・よくする(improve one's mind で「教養を高める」)
  • snapping(スナッピング)… (カメラで)ぱちぱち撮る(snap away で「次々に撮る」)・ぱちんと鳴らす
  • develop(ディヴェロップ)… (写真を)現像する・発達させる・開発する
  • presume(プリジューム)… 〜だと思う・推定する(文末の I presume で「〜ですね?」)
  • faults(フォールツ)… 欠点・短所(fault の複数形)
  • fellow(フェロウ)… 男・やつ・仲間
  • cellar(セラー)… 地下室・地下貯蔵庫

次の場面:赤毛だったらなあ If Only I Were Red

助手は今も店にいるとウィルソンは答える。家にいるのは助手と、料理と掃除をする十四歳の娘だけで、男やもめの彼は三人で静かに暮らしてきた。その暮らしを最初にかき乱したのが、例の広告だった。八週間前、助手のスポールディングが新聞を手に、自分が赤毛だったらと嘆いたのが始まりである。