Scene 14 · Notes

解説 場面 14「組合の空席」

この場面の解説

スポールディングは、赤毛組合にまた空きが出たと話す。空きが多すぎて、管財人は金の使い道に困っているほどだという。めったに外出せず世間にうといウィルソンは、ちょっとした噂話にも飢えていた。

表現・文法のポイント

at their wits' end
be at one's wits' end は「途方に暮れる、万策尽きる」。wits は「知恵、才覚」で、それが尽きた所にいる、というイメージ。後ろの what to do with the money が、何に困っているのかを示している。
a nice little crib
crib はもともと「まぐさ桶、小屋」だが、当時の俗語で「楽な勤め口、職」の意味があった。nice little ~ は「ちょっとした、なかなかいい~」と、ありがたみを込めた言い方。step into は「(地位に)すんなり就く」。
my business came to me instead of my having to go to it
質屋は客のほうが品物を持って店に来る商売なので、自分から出かける必要がない、ということ。my having to go は、動名詞の前に所有格を置いて「私が~しなければならないこと」と主語を示す形だ。
weeks on end
on end は「続けて、ぶっ通しで」。weeks on end で「何週間も続けて」。days on end、hours on end のようにも使う。玄関マットの外へ一歩も出ない、という誇張と合わせて、出不精ぶりを強調している。

背景・時代

管財人(trustees)
遺産や基金を預かり、遺言や規約に従って運用・分配する人。当時のイギリスでは、遺言で信託を作り、風変わりな条件をつけて財産を配る例も珍しくなかった。

全文の対訳

"'Why,' says he, 'here's another vacancy on the League of the Red-headed Men. It's worth quite a little fortune to any man who gets it, and I understand that there are more vacancies than there are men, so that the trustees are at their wits' end what to do with the money. If my hair would only change colour, here's a nice little crib all ready for me to step into.'

「『いやね』とあいつは言うんです。『赤毛組合にまた空きが出たんですよ。受かった人にはちょっとした財産になる話でしてね、聞いたところじゃ、空きの数のほうが人より多いもんだから、管財人たちはお金の使い道に困り果てているそうです。この髪の色さえ変わってくれりゃ、おいしい勤め口がすぐにでも手に入るってのに』

"'Why, what is it, then?' I asked. You see, Mr. Holmes, I am a very stay-at-home man, and as my business came to me instead of my having to go to it, I was often weeks on end without putting my foot over the door-mat. In that way I didn't know much of what was going on outside, and I was always glad of a bit of news.

「『へえ、それはいったい何なんだい?』と私は聞きました。なにしろホームズさん、私はひどい出不精でして、商売のほうから店に来てくれるので自分から出かける必要もなく、何週間も続けて玄関マットの外へ一歩も出ないことがよくあったんです。そんなわけで世間のことはあまり知らず、ちょっとした噂話でも聞けると、いつもうれしかったんですよ。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • trustees(トラスティーズ)… 管財人・理事(trustee の複数形)難
  • crib(クリブ)… (当時の俗語)楽な勤め口・(crack a crib で)家に押し入る・ベビーベッド難
  • stay-at-home(ステイアットホウム)… 出不精の・家にこもりがちな(人)
  • red-headed(レッドヘディッド)… 赤毛の
  • vacancies(ヴェイカンスィーズ)… 空き・欠員(vacancy の複数形)
  • door-mat(ドアマット)… 玄関マット・靴ふき
  • vacancy(ヴェイカンスィー)… 欠員・空き・空室
  • fortune(フォーチュン)… 財産・大金・幸運・運

次の場面:年に二百ポンド Two Hundred a Year

赤毛組合を知らないと聞いて、スポールディングは目を丸くする。ウィルソン自身にも応募の資格があるというのだ。報酬は年に二百ポンドほどで、仕事は軽く、本業の邪魔にもならないらしい。ここ数年、商売が振るわなかったウィルソンは思わず耳をそばだて、詳しく話してくれと頼む。