Scene 17 · Notes

解説 場面 17「燃える赤毛だけ」

この場面の解説

スポールディングによれば、組合に入れるのはロンドンの大人の男で、しかも燃えるような真っ赤な髪の者だけだという。髪の色には自信のあるウィルソンは、助手に店を閉めさせ、すぐに広告の宛先へ向かった。

表現・文法のポイント

do the old town a good turn
do A a good turn は「A に親切にする、A のためになることをする」。the old town は「懐かしい町」くらいの親しみを込めた言い方で、ここでは若いころ過ごしたロンドンのこと。
it is no use your applying
It is no use ~ing は「~しても無駄だ」。your は動名詞 applying の意味上の主語で、「あなたが応募しても」。後ろの anything but ~ は「~以外なら何でも」で、本物の赤以外はだめだ、という条件を表している。
worth your while
be worth one's while は「(時間や手間をかける)価値がある」。hardly がついて「ほとんど割に合わない」。put yourself out of the way は「わざわざ手間をかける」。わざと控えめに言って、相手をその気にさせる話し方だ。
put up the shutters
「(店の)雨戸を閉める」、つまりその日の店じまいをすること。当時の商店は、夜や休業日に木の雨戸(shutters)を窓にはめて閉めた。for the day は「その日一日は」。

背景・時代

赤毛(red hair)
当時のイギリスでは、赤毛はからかいの的になりやすく、アイルランドやスコットランドの血筋と結びつけて見られることもあった。それだけに「赤毛であることが得になる」という話は、いっそう奇妙に聞こえた。

全文の対訳

"'Not so many as you might think,' he answered. 'You see it is really confined to Londoners, and to grown men. This American had started from London when he was young, and he wanted to do the old town a good turn. Then, again, I have heard it is no use your applying if your hair is light red, or dark red, or anything but real bright, blazing, fiery red. Now, if you cared to apply, Mr. Wilson, you would just walk in; but perhaps it would hardly be worth your while to put yourself out of the way for the sake of a few hundred pounds.'

「『それが、思うほど多くはないんですよ』と彼は答えました。『実はロンドンっ子の、それも大人の男に限られていますからね。そのアメリカ人は若いころにロンドンから旅立った人で、この懐かしい町に恩返しがしたかったんです。それに、聞いたところでは、髪が薄い赤だの、濃い赤だの、とにかく本物の、明るい、燃え立つような、炎みたいな赤でなけりゃ、応募しても無駄なんだそうです。ですから、その気になって応募なされば、ウィルソンさん、すんなり決まりますよ、もっとも、たかが数百ポンドのために、わざわざ出かけるほどのこともないかもしれませんがね』

"Now, it is a fact, gentlemen, as you may see for yourselves, that my hair is of a very full and rich tint, so that it seemed to me that if there was to be any competition in the matter I stood as good a chance as any man that I had ever met. Vincent Spaulding seemed to know so much about it that I thought he might prove useful, so I just ordered him to put up the shutters for the day and to come right away with me. He was very willing to have a holiday, so we shut the business up and started off for the address that was given us in the advertisement.

「さて、お二人とも、ご覧のとおりですがね、私の髪はじつに濃くて豊かな色合いですから、もし競争になったとしても、これまで会ったどんな男にも負けない見込みがあると思えたんです。ヴィンセント・スポールディングはこの件にずいぶん詳しいようでしたから、役に立つかもしれないと思って、その日は店の雨戸を閉めさせ、すぐ一緒に来るよう言いつけました。あいつも休みになるのは大歓迎でしたので、私たちは店を閉めて、広告に出ていた宛先へと出かけたんです。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • advertisement(アドヴァーティスメント)… 広告
  • competition(コンペティション)… 競争・競技会
  • londoners(ランダナーズ)… ロンドンっ子・ロンドン市民(Londoner の複数形)
  • confined(コンファインド)… 限られた・閉じ込められた
  • applying(アプライイング)… 応募すること・申し込むこと(apply の -ing 形)
  • shutters(シャッターズ)… 雨戸・よろい戸(shutter の複数形。put up the shutters で「店じまいする」)
  • blazing(ブレイズィング)… 燃え立つような・強烈な
  • willing(ウィリング)… 進んで〜する・いとわない

次は第 2 章「百科事典を写す仕事」

応募の日、フリート街は赤毛の男たちであふれかえる。ウィルソンは面接を通り、毎日事務所で百科事典を書き写すだけで、週に四ポンドを受け取るようになる。楽な仕事は八週間続いた。ところがある朝、事務所の扉には思いもよらない一枚の貼り紙があった。