Scene 35 · Notes

解説 場面 35「額の白いしみ」

この場面の解説

ウィルソンによると、スポールディングは小柄でがっしりし、三十近いのにひげがなく、額に酸がはねた白い跡がある。それを聞いたホームズは興奮して身を起こし、耳に耳輪の穴があることまで言い当てる。

表現・文法のポイント

What is he like, this Vincent Spaulding?
What is ~ like? は「~はどんな人(もの)か」で、見た目や人柄を尋ねる定番の言い方。like は前置詞で「~のような」。How is he? は「元気か」と調子を尋ねる言い方なので区別したい。後ろの this Vincent Spaulding は he を言い直したもの。
though he's not short of thirty
short of ~ は「~に届かない、~に足りない」。not short of thirty で「三十に足りないことはない」、つまり「三十近い(三十にはなる)」という意味。それなのに顔にひげがない、という意外さを表している。
I thought as much
「そんなことだろうと思った」「やはりそうか」。as much は「それだけのこと、そのくらい」を指し、前もって予想していたことが当たったときに使う。椅子から身を起こすほどのホームズの興奮がにじむ、短い一言だ。

背景・時代

ジプシー(gipsy)
当時、各地を移動しながら暮らすロマの人々をこう呼んだ(今は差別的な呼び方とされ、ロマと呼ぶのが一般的)。gipsy は gypsy の古いつづり。当時のイギリスで男が耳に穴を開けているのは珍しく、目立つ特徴だった。

全文の対訳

"At half wages, in fact."

「しかも、給金は半分でだね」

"Yes."

「そうです」

"What is he like, this Vincent Spaulding?"

「どんな男かね、そのヴィンセント・スポールディングというのは?」

"Small, stout-built, very quick in his ways, no hair on his face, though he's not short of thirty. Has a white splash of acid upon his forehead."

「小柄で、がっしりした体つきで、動きがとてもすばしこくて、もう三十にはなるのに、顔にひげが一本もありません。額には、酸がはねた白い跡があります」

Holmes sat up in his chair in considerable excitement. "I thought as much," said he. "Have you ever observed that his ears are pierced for earrings?"

ホームズはひどく興奮した様子で、椅子の上で身を起こした。「やはりそうか」と彼は言った。「彼の耳に、耳輪をつけるための穴が開いているのに気づいたことはあるかね?」

"Yes, sir. He told me that a gipsy had done it for him when he was a lad."

「ええ、ありますよ。子どものころにジプシーに開けてもらったんだと言っていました」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • stout-built(スタウトビルト)… がっしりした体つきの難
  • gipsy(ジプスィー)… ジプシー(ロマの人々の古い呼び名。今は差別的とされる。gypsy の古いつづり)難
  • considerable(コンスィダラブル)… かなりの・相当な
  • excitement(イクサイトメント)… 興奮・わくわくする気持ち
  • forehead(フォーリッド)… 額・おでこ
  • observed(オブザーヴド)… 観察した・注意して見た(observe の過去分詞)
  • pierced(ピアスト)… 穴のあいた・貫かれた
  • splash(スプラッシュ)… はねた跡・しぶき・はね散らす

次の場面:月曜までに By Monday

助手スポールディングの額には酸のはねた白い跡があり、耳には耳輪の穴まであった。それを聞いたホームズは興奮して身を起こしたが、やがて深く考え込む。助手は今もウィルソンの店にいて、留守のあいだも店を任されているという。ホームズはいくつか確かめたうえで、ウィルソンを帰すことにする。