Scene 42 · Notes

解説 場面 42「ズボンのひざ」

この場面の解説

ホームズが見たかったのは助手の顔ではなく、ズボンのひざだった。そこには予想どおりのものがあったという。歩道を叩いた理由を問われても、ホームズは今は観察のときだと言って答えず、広場の裏手へと向かう。

表現・文法のポイント

What I expected to see
what は「~するもの、~すること」という意味の関係代名詞。「私が見ると予想していたもの」で、直前の what did you see? への答えになっている。何が見えたかを具体的に言わず、相手をじらすホームズらしい返事だ。
this is a time for observation, not for talk
a time for A, not for B で「Bではなく、Aをするとき」。observation は「観察」で、ホームズの方法の要となる言葉。「今は口を動かすより目を使え」と、ワトソンの質問をやんわり退けている。
We are spies in an enemy's country
「われわれは敵国に入り込んだスパイだ」というたとえ。目立たぬよう、相手に気づかれぬよう探れ、という心構えを言っている。an enemy's country は「敵の国」で、enemy's は所有格。
Let us now explore the parts which lie behind it
Let us ~ は「~しよう」と誘う言い方で、会話ではふつう Let's と縮める。lie behind ~ は「~の裏手にある」。lie は「横たわる」から転じて、場所が「位置する」の意味で使われる。

背景・時代

歩道(pavement)
イギリス英語の pavement は、車道わきの「歩道」を指す。アメリカ英語ではふつう sidewalk と言い、pavement は「舗装した路面」の意味になる。前の場面でホームズは、ステッキでこの歩道を強く叩いていた。

全文の対訳

"Not him."

「彼じゃないよ」

"What then?"

「じゃあ、何を?」

"The knees of his trousers."

「ズボンのひざさ」

"And what did you see?"

「それで、何が見えたんだい?」

"What I expected to see."

「思っていたとおりのものさ」

"Why did you beat the pavement?"

「どうして歩道を叩いたんだい?」

"My dear doctor, this is a time for observation, not for talk. We are spies in an enemy's country. We know something of Saxe-Coburg Square. Let us now explore the parts which lie behind it."

「いいかね、先生、今は観察するときで、おしゃべりをするときではないよ。われわれは敵地に入り込んだスパイなんだ。サックス・コバーグ・スクエアのことは、いくらか分かった。今度はその裏手を探ってみよう」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • observation(オブザヴェイション)… 観察
  • trousers(トラウザーズ)… ズボン
  • pavement(ペイヴメント)… 歩道(英)・舗装道路
  • enemy's(エネミーズ)… 敵の(enemy の所有格)
  • explore(イクスプロー)… 探る・探検する
  • spies(スパイズ)… スパイ(spy の複数形)

次の場面:裏手のにぎわい The Busy Street Behind

閑静なサックス・コバーグ・スクエアから角を曲がると、景色は一変する。そこはシティから北と西へ人と物を運ぶ大通りの一つで、車道は行き交う荷馬車でふさがり、歩道は急ぐ人の群れで黒く見えるほどだ。立派な店や商社が並ぶこの通りが、さっきのさびれた広場と背中合わせだとは、とても信じられない。