Scene 46 · Notes

解説 場面 46「今夜、犯罪が」

この場面の解説

音楽会のあと、ホームズはワトソンを家に帰し、自分はまだ用事があると言う。コバーグ・スクエアでは大きな犯罪がたくらまれていて、今なら食い止められるという。今日が土曜日であることが事情をややこしくしており、今夜十時にワトソンの助けが要るという。

表現・文法のポイント

You want to go home, no doubt
no doubt は「きっと、おそらく」。文字どおりは「疑いなく」だが、会話では「~だろうね」と相手の気持ちを察する軽い言い方になる。帰りたいだろうと言いつつ、実は今夜の用事を切り出す前置きになっている。
A considerable crime is in contemplation
in contemplation は「計画中で、もくろまれて」。contemplation は「熟考」から「意図、もくろみ」の意味に広がる語。considerable は「かなりの、相当な」で、「相当な犯罪がたくらまれている」となる。
But to-day being Saturday rather complicates matters
to-day being Saturday は「今日が土曜日であること」という動名詞のかたまりで、文の主語になっている。rather は「いささか」、complicate matters は「事をややこしくする」。to-day は today の古い綴り。
Ten will be early enough
「十時なら十分早い」、つまり「十時で間に合う」。~ enough は形容詞の後ろに置いて「十分に~」の意味になる。時刻を主語にして、短く答えるホームズらしい言い方だ。

背景・時代

to-day・to-night(古い綴り)
today や tonight は、19世紀にはハイフンをつけて to-day、to-night と書くのがふつうだった。もとは to(=on)+ day で「この日に」の意味。20世紀に入ってハイフンのない形が広まった。

全文の対訳

"You want to go home, no doubt, Doctor," he remarked as we emerged.

「先生は、そろそろ家へ帰りたいところだろうね」と、外へ出たところで彼が言った。

"Yes, it would be as well."

「ああ、そのほうがよさそうだ」

"And I have some business to do which will take some hours. This business at Coburg Square is serious."

「私のほうは、何時間かかかる用事があってね。コバーグ・スクエアの一件は重大だよ」

"Why serious?"

「どうして重大なんだい?」

"A considerable crime is in contemplation. I have every reason to believe that we shall be in time to stop it. But to-day being Saturday rather complicates matters. I shall want your help to-night."

「相当な犯罪がたくらまれているんだ。食い止めるのに間に合うと信じるだけの理由は、十分にある。ただ、今日が土曜日なのが、話をいささかややこしくしている。今夜はきみの手を借りたい」

"At what time?"

「何時に?」

"Ten will be early enough."

「十時なら間に合う」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • contemplation(コンテンプレイション)… (in contemplation で)計画中で・熟考・瞑想難
  • considerable(コンスィダラブル)… かなりの・相当な
  • complicates(コンプリケイツ)… ややこしくする(complicate の三単現)
  • remarked(リマークト)… 言った・述べた
  • emerged(イマージド)… 出てきた・現れた
  • rather(ラーザ)… (言い直して)むしろ・いや・かなり
  • doubt(ダウト)… 疑い
  • crime(クライム)… 犯罪

次の場面:拳銃を持って Bring Your Revolver

十時にベイカー街へ行くと約束したワトソンに、ホームズは軍用の拳銃を持ってくるよう言い残し、人ごみに消える。同じものを見聞きしたのに、ワトソンには何が起ころうとしているのかまるで分からない。ケンジントンの家へ帰る馬車の中で、夜の遠出の意味や、あの質屋の助手が手ごわい男だというホームズの言葉を考え続ける。