Scene 47 · Notes

解説 場面 47「拳銃を持って」

この場面の解説

ホームズは、危険があるかもしれないから軍用の拳銃を持ってくるようにと言い、人ごみに消える。ワトソンは、同じものを見聞きしながら自分には何も分からないことにもどかしさを覚える。家へ帰る道すがら考え続けるが、結局あきらめて夜を待つことにする。

表現・文法のポイント

turned on his heel
turn on one's heel は「かかとを軸にくるりと向きを変える」、つまり「さっと背を向けて立ち去る」。話を打ち切ってきびきびと去っていく様子を表す決まった言い方だ。
I trust that I am not more dense than my neighbours
I trust that ~ は「~だと信じたい、~だろうと思う」という控えめな言い方。dense は「密集した」のほか「頭の鈍い」の意味がある。neighbours はここでは「近所の人」より「世間の人、ほかの人々」。
what was about to happen
be about to ~ は「まさに~しようとしている」。直前の what had happened(すでに起きたこと)と対になっていて、ホームズには過去だけでなく、これから起きることまで見えているという驚きを表している。
play a deep game
a deep game は「底の知れない勝負」、play a deep game で「腹の内を見せずに、たくらみをめぐらす」。deep は「深い」から「腹黒い、計り知れない」の意味になる。

背景・時代

軍用拳銃(army revolver)
ワトソンはもと陸軍の軍医で、アフガニスタンでの戦争に従軍し、負傷して帰国した。そのとき持ち帰った軍用の回転式拳銃を、ホームズとの冒険でたびたび携えている。
ケンジントン(Kensington)
ロンドン西部の住宅地。この物語のころワトソンは結婚してベイカー街を離れ、開業医として自宅を構えていた。シティからは馬車でかなりの道のりになる。

全文の対訳

"I shall be at Baker Street at ten."

「十時にベイカー街へ行くよ」

"Very well. And, I say, Doctor, there may be some little danger, so kindly put your army revolver in your pocket." He waved his hand, turned on his heel, and disappeared in an instant among the crowd.

「よろしい。それから、いいかね、先生、少々危ないことがあるかもしれないから、軍隊時代の拳銃をポケットに入れてきてくれたまえ」彼は手を振り、くるりと背を向けると、あっという間に人ごみの中へ消えた。

I trust that I am not more dense than my neighbours, but I was always oppressed with a sense of my own stupidity in my dealings with Sherlock Holmes. Here I had heard what he had heard, I had seen what he had seen, and yet from his words it was evident that he saw clearly not only what had happened but what was about to happen, while to me the whole business was still confused and grotesque. As I drove home to my house in Kensington I thought over it all, from the extraordinary story of the red-headed copier of the Encyclopædia down to the visit to Saxe-Coburg Square, and the ominous words with which he had parted from me. What was this nocturnal expedition, and why should I go armed? Where were we going, and what were we to do? I had the hint from Holmes that this smooth-faced pawnbroker's assistant was a formidable man—a man who might play a deep game. I tried to puzzle it out, but gave it up in despair and set the matter aside until night should bring an explanation.

私は人並み以上に鈍いわけではないつもりだが、シャーロック・ホームズとかかわっていると、いつも自分の愚かさを思い知らされて気が重くなった。今度も私は、彼と同じことを聞き、同じものを見ていたのに、彼の口ぶりからすると、彼には起きたことばかりか、これから起ころうとしていることまではっきり見えているのは明らかで、私にとっては、この一件はまだ何もかもがもつれた奇怪なものでしかなかった。ケンジントンの自宅へ馬車で帰りながら、私は、百科事典を書き写していた赤毛の男の奇妙な話から、サックス・コバーグ・スクエアへの訪問、そして別れぎわに彼が口にした不吉な言葉まで、一部始終を思い返した。この夜の遠征とはいったい何なのか、なぜ私が武器を持っていかねばならないのか。どこへ行き、何をしようというのか。ホームズは、あのつるりとした顔の質屋の助手が手ごわい男、腹の底の読めない勝負に出かねない男だと、ほのめかしていた。私はなんとか謎を解こうとしたが、とうとうあきらめて、夜になれば説明がつくだろうと、この件は脇へ置くことにした。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • oppressed(オプレスト)… 重苦しく感じた・押しつぶされた・虐げられた難
  • grotesque(グロウテスク)… 奇怪な・異様な難
  • copier(コピアー)… 書き写す人・複写機難
  • nocturnal(ノクターナル)… 夜の・夜行性の難
  • smooth-faced(スムーズフェイスト)… ひげのない顔の・つるりとした顔の難
  • pawnbroker's(ポーンブロウカーズ)… 質屋の(pawnbroker の所有格)・質屋の店難
  • formidable(フォーミダブル)… 恐ろしい・手ごわい難
  • extraordinary(イクストローディナリー)… 並外れた

次は第 4 章「夜の待ち伏せ」

その夜、ベイカー街には警部と、見知らぬ紳士が集まっていた。ホームズに導かれ、一行は馬車で暗いロンドンの街へ向かう。行き着いた先で、明かりを消して息をひそめて待つことになる。追っているのは誰なのか。そしてホームズは、どこで謎を解いたのか。