Scene 61 · Notes

解説 場面 61「観念しろ」

この場面の解説

ホームズに捕らえられたジョン・クレイは少しも動じず、相棒は逃げおおせたはずだとうそぶく。だが戸口には三人の男が待ち構えていると聞かされ、クレイはホームズの手際をほめる。

表現・文法のポイント

It's no use
It's no use は「無駄だ、どうにもならない」。後ろに ~ing を続けて It's no use crying.(泣いてもむだだ)のようにも使う。ここでは、逃げようとしても無駄だと、ホームズが穏やかに相手に観念を促している。
with the utmost coolness
utmost は「最大限の、このうえない」、coolness は「冷静さ、落ち着き」。with + 名詞で様子を表し、「このうえなく落ち着き払って」となる。捕まっても少しも動じないクレイの、ふてぶてしいほどの度胸が伝わる表現だ。
I fancy that my pal is all right
fancy (that) ~ は「~だと思う、~のような気がする」というイギリス英語の言い方で、think より軽く控えめ。pal は「相棒、仲間」のくだけた語。all right は「無事だ」の意味で、相棒は逃げおおせたはずだと強がっている。

背景・時代

上着の裾(coat-tails)
当時の紳士が着たフロックコートや燕尾服は、背中側の裾が長く垂れていた。coat-tails はその裾のこと。穴に飛び込んだ相棒の裾をジョーンズがつかんだが、布が裂けて取り逃がしたのである。

全文の対訳

"It's no use, John Clay," said Holmes blandly. "You have no chance at all."

「無駄だよ、ジョン・クレイ」とホームズは穏やかに言った。「きみに勝ち目はまったくない」

"So I see," the other answered with the utmost coolness. "I fancy that my pal is all right, though I see you have got his coat-tails."

「そのようだな」と相手は、このうえなく落ち着き払って答えた。「上着の裾はつかまれたようだが、相棒のほうは無事に逃げたと思うがね」

"There are three men waiting for him at the door," said Holmes.

「戸口で三人の男がその相棒を待っているよ」とホームズは言った。

"Oh, indeed! You seem to have done the thing very completely. I must compliment you."

「ほう、そうかね!ずいぶん抜かりなくやってのけたようだ。お見事と言わせてもらおう」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • blandly(ブランドリー)… 穏やかに・平然と難
  • coat-tails(コウトテイルズ)… 上着の後ろの裾難
  • compliment(コンプリメント)… ほめる・賛辞を述べる・(名詞)ほめ言葉
  • coolness(クールネス)… 落ち着き・冷静さ・涼しさ
  • chance()…
  • utmost(アトモウスト)… 最大限の・この上ない
  • indeed(インディード)… 本当に・そうかい
  • fancy(ファンスィー)… 〜と思う(やや古風)

次の場面:王族の血 Royal Blood

穴から這い出したところを取り押さえられたジョン・クレイは、ホームズの手際を涼しい顔でほめる。逃げた相棒も戸口で警官に待ち伏せられているという。ジョーンズが手錠をかけようとすると、クレイは高慢な口調でそれをとがめる。追いつめられてもなお、この男は自分を何者だと思っているのか。