Scene 62 · Notes

解説 場面 62「王族の血」

この場面の解説

ホームズは、赤毛を使ったクレイの計画の斬新さを認める。ジョーンズが手錠をかけると、クレイは自分には王族の血が流れていると言い、汚い手で触るな、話しかけるときは敬語を使えと要求する。

表現・文法のポイント

And I you
直前のクレイの I must compliment you. を受けた省略文で、And I (must compliment) you. の意味。「こちらこそ、きみをほめねばならない」と、同じ言い回しを短く返している。英語では、くり返しになる動詞をこのように省くことがよくある。
fix the derbies
derbies は「手錠」を指す古い俗語。fix は「取りつける」で、「手錠をかける」となる。一説には、人を厳しく縛る借金の証文 Darby's bonds(ダービーの証文)に由来し、そこから手錠を表すようになったという。
Have the goodness
have the goodness to ~ は「どうか~していただきたい」という、ひどく丁寧な依頼の言い方。ここでは間に when 節が挟まり、to say へと続く。捕まった身でありながら警部に敬語を要求する、クレイの尊大な皮肉になっている。

背景・時代

王族の血(royal blood)
ジョン・クレイは、祖父が王族の公爵で、本人もイートン校とオックスフォード大学で学んだと語られていた人物だ。名門の血筋を誇る彼は、手錠をかけられても貴族のように振る舞おうとする。

全文の対訳

"And I you," Holmes answered. "Your red-headed idea was very new and effective."

「それはこちらも同じだ」とホームズは答えた。「赤毛を使ったきみの思いつきは、じつに斬新で効果的だった」

"You'll see your pal again presently," said Jones. "He's quicker at climbing down holes than I am. Just hold out while I fix the derbies."

「相棒とはじきにまた会えるさ」とジョーンズが言った。「穴に潜り込む早さじゃ、あいつのほうが私より上だったがな。さあ、手錠をかけるあいだ、手を出していろ」

"I beg that you will not touch me with your filthy hands," remarked our prisoner as the handcuffs clattered upon his wrists. "You may not be aware that I have royal blood in my veins. Have the goodness, also, when you address me always to say 'sir' and 'please.'"

「その汚い手で私に触らないでいただきたい」と、手首に手錠ががちゃりとはめられるなか、捕らわれた男は言った。「ご存じないかもしれないが、私の体には王族の血が流れているのだ。それから、私に話しかけるときは、いつも『旦那様』と『どうか』を忘れずにつけていただこう」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • derbies(ダービーズ)… 手錠(古い俗語)難
  • clattered(クラタード)… ガチャガチャと音を立てた難
  • red-headed(レッドヘディッド)… 赤毛の
  • effective(イフェクティヴ)… 効果的な・効き目のある
  • presently(プレズントリー)… やがて・まもなく・現在
  • handcuffs(ハンドカフス)… 手錠
  • remarked(リマークト)… 言った・述べた
  • prisoner(プリズナー)… 捕らわれた人・囚人

次の場面:銀行の感謝 The Bank's Thanks

手錠をかけられても、ジョン・クレイは王族の血を引くと言い張り、敬意を払うよう求める。ジョーンズは皮肉たっぷりにそれに応じ、彼を地上へ連れ出そうとする。地下室をあとにしながら、銀行のメリーウェザー氏はホームズに向き直る。大きな盗みを未然に防いでもらった銀行は、どう報いればよいのか。