Scene 08 · Notes

解説 場面 8「インドでの結婚」

この場面の解説

ロイロット博士はインドで、ストーナー少将の若い未亡人だった母と結婚した。母は年に千ポンド以上の財産を持ち、娘たちが博士と暮らす間はそれを博士に遺す一方、結婚の際には娘に毎年の額が渡るよう定めた。帰国して間もなく母は鉄道事故で亡くなり、一家はストーク・モランの屋敷に移った。

表現・文法のポイント

the young widow of Major-General Stoner, of the Bengal Artillery
of the Bengal Artillery は少将の所属を添える言い方で、「ベンガル砲兵隊の」。widow of ~ は「~の未亡人」。夫の階級と所属を並べることで、母が相応の身分の人だったと伝わる。
not less than £ 1000 a year
not less than は「少なくとも、~を下らない」。a year の a は「~につき」で、「年に」の意味。数字が小さくないことを、遠回しに強調する言い方になっている。
this she bequeathed to Dr. Roylott entirely
bequeath ~ to … は「遺言で~を…に譲る」。目的語の this を文頭に出して、she bequeathed の語順にしている。それまでの内容を this で受け、話の重点を示す書き方だ。
in the event of our marriage
in the event of ~ は「~の場合には」という硬い言い方。ここでは娘が結婚するときの取り決めを述べている。a provision that ~ should be ... は「~するという条項」で、should は条件の内容を示す。

背景・時代

クルー(Crewe)
イングランド北西部の鉄道の大きな分岐点で、多くの路線が交わる駅町。19世紀の鉄道事故は、新聞をにぎわす大事件になることが多かった。母の死もそうした事故の一つとして語られる。

全文の対訳

"When Dr. Roylott was in India he married my mother, Mrs. Stoner, the young widow of Major-General Stoner, of the Bengal Artillery. My sister Julia and I were twins, and we were only two years old at the time of my mother's re-marriage. She had a considerable sum of money—not less than £ 1000 a year—and this she bequeathed to Dr. Roylott entirely while we resided with him, with a provision that a certain annual sum should be allowed to each of us in the event of our marriage. Shortly after our return to England my mother died—she was killed eight years ago in a railway accident near Crewe. Dr. Roylott then abandoned his attempts to establish himself in practice in London and took us to live with him in the old ancestral house at Stoke Moran. The money which my mother had left was enough for all our wants, and there seemed to be no obstacle to our happiness.

「ロイロット博士はインドにいたころ、私の母と結婚しました。母はベンガル砲兵隊のストーナー少将の若い未亡人で、ストーナー夫人といいました。姉のジュリアと私は双子で、母が再婚したとき、まだ二歳でした。母にはかなりの財産があり——年に千ポンドを下らない額で——それを、私たちが博士のもとで暮らしている間は、すべて博士に遺しました。ただし、私たちが結婚した場合には、それぞれに毎年一定の額を支給するという条件つきでした。私たちがイングランドへ戻って間もなく母は亡くなりました——八年前、クルー近くの鉄道事故で命を落としたのです。そこでロイロット博士はロンドンでの開業をあきらめ、私たちを連れて、ストーク・モランの先祖伝来の古い屋敷で暮らしはじめました。母の遺したお金は私たちの入り用をすべてまかなうに足り、幸せになるのを妨げるものは何もないように思えました。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • major-general(メイジャージェネラル)… 少将難
  • artillery(アーティラリー)… 砲兵隊・大砲難
  • re-marriage(リーマリッジ)… 再婚難
  • bequeathed(ビクウィーズド)… 遺した・遺言で譲った難
  • resided(リザイディッド)… 住んでいた難
  • provision(プロヴィジョン)… 取り決め・条項・備え・供給難
  • ancestral(アンセストラル)… 先祖伝来の難
  • considerable(コンスィダラブル)… かなりの・相当な

次の場面:変わり果てた義父 A Changed Man

屋敷に移った一家に、やがて義父の変化が訪れる。近所づきあいを避け、荒れた気性でひとたび人とぶつかれば手がつけられない。ヘレンは、村の人々が義父をどう恐れているのかを、具体的な出来事とともに語る。義父が親しむ相手と、飼っている動物にも話が及ぶ。