Scene 11 · Notes

解説 場面 11「屋敷の間取り」

この場面の解説

ホームズは細部を正確に話すようヘレンに求める。ヘレンは、屋敷では片側の棟だけが使われ、その一階に博士、姉、自分の三つの寝室が並び、どれも同じ廊下に面していると説明する。運命の夜、博士の葉巻の匂いを避けて姉は妹の部屋へ来て、結婚の話をし、十一時に戸口で立ち止まった。

表現・文法のポイント

with his eyes closed and his head sunk in a cushion
with + 名詞 + 過去分詞・形容詞は付帯状況で、「~した状態で」の意味。ここでは「目を閉じ、頭をクッションに沈めて」。ホームズが考えごとにふけっている姿が、二つの描写で重ねて示される。
Pray be precise as to details
pray は please より古風で改まった「どうか」。as to ~ は「~に関して」で、about に近い。「細部については正確に」と、依頼人にていねいに、しかし念を押すように求める台詞だ。
Do I make myself plain?
make oneself plain は「自分の言うことを分からせる」で、make oneself understood に近い。ここの plain は「はっきりした、明白な」の意味。間取りの説明が伝わっているか確かめている。
which it was his custom to smoke
it was his custom to smoke は「それを吸うのが彼の習慣だった」で、it は後ろの to 不定詞を指す形式主語。which は cigars を受ける関係代名詞で、his custom to smoke の目的語になっている。

背景・時代

マナーハウス(manor-house)
もとは領主が荘園を治めた館。この物語では、一部しか使われないほど古く大きな屋敷として描かれる。寝室が一階に並び、窓が芝生に直接面するのも、古い造りゆえである。

全文の対訳

Sherlock Holmes had been leaning back in his chair with his eyes closed and his head sunk in a cushion, but he half opened his lids now and glanced across at his visitor.

シャーロック・ホームズは目を閉じ、頭をクッションに沈めて椅子にもたれていたが、ここでまぶたを半ば開け、客のほうへ視線を向けた。

"Pray be precise as to details," said he.

「どうか細部は正確に話してください」と彼は言った。

"It is easy for me to be so, for every event of that dreadful time is seared into my memory. The manor-house is, as I have already said, very old, and only one wing is now inhabited. The bedrooms in this wing are on the ground floor, the sitting-rooms being in the central block of the buildings. Of these bedrooms the first is Dr. Roylott's, the second my sister's, and the third my own. There is no communication between them, but they all open out into the same corridor. Do I make myself plain?"

「そうするのはたやすいことです。あの恐ろしい時期の出来事は、どれも記憶に焼きついていますから。領主館は、すでに申しましたとおり、たいへん古く、今は片方の棟にしか人が住んでいません。この棟の寝室はどれも一階にあり、居間は建物の中央の棟にあります。この寝室のうち、一つめがロイロット博士の部屋、二つめが姉の部屋、三つめが私の部屋です。部屋どうしは通じておらず、どれも同じ廊下に面して開いています。私の説明は、わかりやすいでしょうか?」

"Perfectly so."

「実にわかりやすい」

"The windows of the three rooms open out upon the lawn. That fatal night Dr. Roylott had gone to his room early, though we knew that he had not retired to rest, for my sister was troubled by the smell of the strong Indian cigars which it was his custom to smoke. She left her room, therefore, and came into mine, where she sat for some time, chatting about her approaching wedding. At eleven o'clock she rose to leave me, but she paused at the door and looked back.

「三つの部屋の窓は、どれも芝生に面して開いています。あの運命の夜、ロイロット博士は早くに自室へ引き取りましたが、まだ寝ていないのはわかっていました。姉が、博士の習慣である強いインド葉巻の匂いに悩まされていたからです。そこで姉は自分の部屋を出て私の部屋へ来て、しばらく腰かけ、近づいた結婚式の話をしていました。十一時になって姉は私のもとを去ろうと立ち上がりましたが、戸口で足を止め、振り返りました。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • seared(スィアド)… 焼きつけられた・焼かれた難
  • manor-house(マナーハウス)… 領主の館・大きな屋敷難
  • inhabited(インハビティッド)… 人が住んでいる難
  • sitting-rooms(スィッティングルームズ)… 居間
  • communication(コミューニケイション)… 通じていること・連絡・通信
  • approaching(アプロウチング)… 近づく・近づいている
  • therefore(ゼアフォー)… それゆえ・したがって
  • dreadful(ドレッドフル)… ひどい・恐ろしい

次の場面:夜の口笛 A Whistle in the Night

戸口で足を止めた姉は、妹のヘレンにふと妙な問いを投げかける。真夜中に口笛を聞いたことはないか、と。ここ数日、夜中の三時ごろになると、低くはっきりした音で目が覚めるのだという。ヘレンは聞いたことがなく、思いつくままに答える。