Scene 14 · Notes

解説 場面 14「嵐の夜」

この場面の解説

その夜、ヘレンは不吉な予感で眠れず、荒れ模様の外では風と雨が窓を打っていた。やがて嵐の騒ぎを突き破って姉の悲鳴が響き、ヘレンはショールを巻いて廊下へ駆け出す。戸を開けると低い口笛と金属が落ちるような音が聞こえ、姉の部屋の戸が鍵の外れたまま、ゆっくり回って開いた。

表現・文法のポイント

A vague feeling of impending misfortune impressed me
impending は「差し迫った」で、悪いことが目前に迫る場面で使う。impress は「印象を与える」だが、ここでは「(心に)重くのしかかる」感じ。語順は主語が長い名詞句で、文語的だ。
how subtle are the links which bind two souls
how + 形容詞 + be 動詞 + 主語と倒置し、感嘆の気持ちを文語的に強めている。subtle は「微妙な」、links は「絆」。双子の心のつながりを、ホームズに分かってもらおうとする台詞だ。
as if a mass of metal had fallen
as if + 過去完了は、事実かどうかわからない「まるで~したかのように」を表す。a mass of ~ は「ひとかたまりの~」。ここでは重い金属の塊が落ちたような音を、たとえの形で伝えている。
revolved slowly upon its hinges
revolve は「回る」、hinges は「蝶番」。ドアがゆっくり開くさまを revolve で表すと、ぎこちなく不気味な動きに感じられる。upon its hinges は、蝶番を軸に回ることを示す。

全文の対訳

"I could not sleep that night. A vague feeling of impending misfortune impressed me. My sister and I, you will recollect, were twins, and you know how subtle are the links which bind two souls which are so closely allied. It was a wild night. The wind was howling outside, and the rain was beating and splashing against the windows. Suddenly, amid all the hubbub of the gale, there burst forth the wild scream of a terrified woman. I knew that it was my sister's voice. I sprang from my bed, wrapped a shawl round me, and rushed into the corridor. As I opened my door I seemed to hear a low whistle, such as my sister described, and a few moments later a clanging sound, as if a mass of metal had fallen. As I ran down the passage, my sister's door was unlocked, and revolved slowly upon its hinges. I stared at it horror-stricken, not knowing what was about to issue from it.

「その夜、私は眠れませんでした。何か漠然と、不幸が迫っているような予感が胸にのしかかっていました。姉と私が双子だったことを思い出してください。これほど深く結ばれた二つの魂を結ぶ絆がどれほど微妙なものか、あなたならご存じでしょう。荒れ模様の夜でした。外では風がうなり、雨が窓を打ちつけて、水しぶきを上げていました。突然、嵐の大騒ぎのただ中から、怯えきった女の狂おしい悲鳴が響きました。それが姉の声だとすぐにわかりました。私はベッドから跳ね起き、ショールを体に巻きつけ、廊下へ飛び出しました。戸を開けると、姉が話していたような低い口笛が聞こえた気がし、少しのち、金属の塊が落ちたかのような、ガチャンと響く音がしました。廊下を走っていくと、姉の部屋の戸は鍵が外れており、蝶番を軸にゆっくりと開いていきました。私は恐怖に打たれてそれを見つめ、中から何が出てくるのかもわかりませんでした。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • impending(インペンディング)… 差し迫った難
  • misfortune(ミスフォーチュン)… 不幸・災難難
  • recollect(レコレクト)… 思い出す難
  • allied(アライド)… 結ばれた・同盟した難
  • amid(アミッド)… ~に囲まれて・~の中で難
  • hubbub(ハバブ)… 大騒ぎ・騒音難
  • gale(ゲイル)… 強風・暴風難
  • forth(フォース)… 前へ・外へ(burst forth=ほとばしる)難
  • clanging(クランギング)… ガチャンと鳴る難
  • revolved(リヴォルヴド)… 回った難
  • hinges(ヒンジズ)… 蝶番難
  • horror-stricken(ホラーストリクン)… 恐怖に打たれた難

次の場面:まだらの紐 The Speckled Band

嵐の夜に姉の悲鳴を聞いたヘレンは、ショールを巻いて廊下へ飛び出した。姉の部屋の扉がひとりでに開き、ランプの明かりの中に姉の姿が現れる。ヘレンの回想は、ここから姉の最期の場面へと進んでいく。外では嵐が吹き荒れている。