Scene 21 · Notes

解説 場面 21「屋敷へ行く約束」

この場面の解説

ホームズは、決める前に知りたいことが無数にあるが一刻の猶予もないと言い、義父に知られずに屋敷の部屋を見られるかを尋ねる。ヘレンは、義父は今日町へ出て留守にする見込みで、家政婦も遠ざけられると答える。ホームズはワトソンを誘い、二人で行くことにする。

表現・文法のポイント

a thousand details which I should desire to know
a thousand は「千の」から「無数の」という誇張。should desire は「知りたいと思う」を控えめに言う丁寧な形で、ここでの should は義務ではなく、相手への配慮を含む婉曲表現。
Yet we have not a moment to lose.
not a moment は no moment より強く「一刻も~ない」。have not ~ という古風な語順で、今なら We do not have a moment to lose. となる。急を要する状況を簡潔に表す。
As it happens
「たまたま、ちょうど折よく」と、都合のよい偶然を述べる決まり文句。ここでは偶然にも義父の外出予定が、ホームズの調査に好都合だったことを、ヘレンが控えめに切り出している。
You are not averse to this trip, Watson?
averse to ~ は「~に反対して、気が進まない」。not averse と否定で言うと「喜んで」という控えめな同意の誘いになる。文末の Watson? は同意を求める調子で、「かい?」と聞く口調。

全文の対訳

"This is a very deep business," he said at last. "There are a thousand details which I should desire to know before I decide upon our course of action. Yet we have not a moment to lose. If we were to come to Stoke Moran to-day, would it be possible for us to see over these rooms without the knowledge of your stepfather?"

「これは実に根が深い事件だ」と、彼はやがて言った。「方針を決める前に、知っておきたい細かいことが千もある。だが、一刻の猶予もない。今日ストーク・モランへ行くとして、義父に知られずにこれらの部屋を見て回ることはできるでしょうか?」

"As it happens, he spoke of coming into town to-day upon some most important business. It is probable that he will be away all day, and that there would be nothing to disturb you. We have a housekeeper now, but she is old and foolish, and I could easily get her out of the way."

「ちょうど、今日、ある大事な用事で町に出ると申しておりました。一日中留守にする見込みが高く、あなた方の邪魔をするものは何もないでしょう。今は家政婦がおりますが、年老いて頭も鈍いので、簡単に遠ざけられます」

"Excellent. You are not averse to this trip, Watson?"

「結構。きみはこの小旅行に異存はないね、ワトソン?」

"By no means."

「まったくないよ」

"Then we shall both come. What are you going to do yourself?"

「では、二人で伺います。あなたご自身は、どうなさいますか?」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • averse(アヴァース)… 嫌がって・反対で(be averse to 〜)難
  • housekeeper(ハウスキーパー)… 家政婦
  • stepfather(ステップファーザー)… 義父・継父
  • knowledge(ノリッジ)… 知識
  • probable(プロバブル)… ありそうな・たぶん起こる
  • details(ディテイルズ)… 細かい点・詳細(複数)
  • happens(ハプンズ)… 起こる・たまたまそうなる(as it happens=ちょうど)
  • disturb(ディスターブ)… 邪魔する・乱す

次の場面:依頼人の帰り The Client Departs

ホームズの頼みに、ヘレンは町での用事を済ませたら正午の列車で屋敷へ戻ると答える。ホームズは午後早くに伺うと約束し、朝食を勧めるが、彼女は断る。悩みを打ち明けて心が軽くなった彼女は、ヴェールをおろして去る。