ホームズのよく出る言い回し
ホームズの会話には、相手に話を促す短い言葉や、考えを示す決まった形が出てきます。一語ずつ意味を当てはめるだけでは、会話の調子を取り違えることがあります。よみうち英語の公開中の7話から、Pray、I fancy、Depend upon it、My dear Watsonを数え、事件の答えに触れない例を選びました。英文と訳はアプリの本文のままです。
回数は、誰の発言かと分けて見る
下の回数は、7話の本文全体で、大文字と小文字を区別せずに数えた文字列の出現数です。語の境目を合わせ、複数語の表現は連続している場合だけを数えています。ホームズ以外の発言や、同じつづりでも別の意味の用法を含みます。ホームズ本人だけの口癖の回数ではありません。
| 表現 | 本文全体の回数 | 意味を見るときの注意 |
|---|---|---|
| Pray | 22回 | 依頼を促す用法のほか、「祈る」の2回を含みます。 |
| I fancy | 7回 | ホームズ以外の人物も使います。 |
| Depend upon it | 2回 | 「断言してもよい」という独立した言い方は1回です。 |
| My dear Watson | 4回 | 呼びかけであり、あとに続く発言と合わせて読みます。 |
回数が多い表現から順に暗記する必要はありません。たとえばDepend upon itは、同じ三語でも役割が違う例があります。数字は出会う機会を知る手掛かりにして、意味はその文へ戻って確かめてください。
Prayは、相手へ話や行動を促す
『ボヘミアの醜聞』場面16のホームズの言葉です。
“Pray take a seat,” said Holmes.
「どうぞおかけください」とホームズは言った。
このprayは、相手に座るよう勧める「どうぞ」です。サイトの辞書にも「どうぞ(丁寧な依頼)」と「祈る」の両方があります。後ろのtake a seatと一緒に読み、どんな行動を相手へ勧めているかを見ます。祈りについて話している場面ではありません。
ほかにも、話を続けるよう促すPray proceedや、教えてほしいというpray tell meが本文に出てきます。これらを見たときは、prayの訳一語を決めるより、後ろの動詞までを一つの依頼として読むと会話がつながります。聞き手へ発言を渡す合図にもなっています。
ただし、集計した22回すべてを「どうぞ」と訳すことはできません。本文にはI prayという形で、願いを祈る用法も2回あります。同じ辞書の窓を開いても、その場の文を見ずに先頭の意味だけを選ばないようにします。言葉の働きの違いを読むためにも、全文の対訳が使えます。
I fancyは、考えを会話の中に添える
『ボヘミアの醜聞』場面04には、次の一文があります。
Just a trifle more, I fancy, Watson.
ほんのちょっとだけ多いと思うよ、ワトソン。
I fancyは、ここでは「〜と思う」です。サイトの辞書にも、やや古風なこの意味が載っています。fancyを「空想」とだけ覚えていると、ホームズが目の前のことについて見積もっている会話が遠くなります。何についてそう考えているのかは、前の文まで戻ると分かります。
この例ではI fancyが文の途中に入り、そのあとにWatsonという呼びかけが続きます。コンマの前後を区切って打つと、話の中心に、考えを添える言葉が挟まっている形を確かめられます。「私は空想する」と別の出来事にせず、周囲の文へつなげて読むのがポイントです。
Depend upon itは、文の形を見て意味を決める
『花婿失踪事件』場面01で、ホームズは現実の出来事についてこう語ります。
Depend upon it, there is nothing so unnatural as the commonplace.”
「断言してもいいが、ありふれたものほど不自然なものはない」
ここでのDepend upon itは、「断言してもいいが」「間違いない」と、自分の言葉への確信を示しています。サイトのdependの項目にも、このまとまりでの意味が入っています。直後には、ありふれたものほど不自然なものはない、という逆説的な発言が続きます。最初の三語だけを「それに頼れ」と置くと、発言の調子が変わります。
一方、集計に入ったもう一つは、何かがそれにかかっているというdependの通常の働きです。同じ三語が見つかっても、文頭で独立した言葉なのか、主語や助動詞とつながる述語なのかを確かめます。表の2回と、会話の決まり文句としての1回を区別した理由です。
My dear Watsonは、呼びかけを受け止める
『赤毛組合』場面01の、友人を迎えるホームズの言葉です。
“You could not possibly have come at a better time, my dear Watson,” he said cordially.
「ワトソン、これ以上ないほどいい時に来てくれたね」と彼は愛想よく言った。
dearは、ここでは相手への親しみを含む呼びかけです。日本語訳では「親愛なる私のワトソン」と一語ずつ並べず、会話として自然な呼び方にしています。後ろのhe said cordiallyまで読むと、迎える側の様子も分かります。辞書の意味、訳し方、語り手の説明を合わせて確かめられる例です。
次に本文でこの四つの表現に出会ったら、回数より、相手へ何をしている発言かを見てください。座るよう勧めるのか、自分の考えを添えるのか、確信を示すのか、友人へ呼びかけるのか。同じ形が別の場面でどう使われるかを、単語の窓や解説から見直せます。
集計日:2026年10月29日。日本語版で公開中の7話の本文だけを対象に、語境界付き・大文字小文字を区別しない一致で数えました。例文と訳は各場面と照合し、PrayとDepend upon itは全出現の文脈も確認しました。