Scene 51 · Notes

解説 場面 51「長い沈黙」

この場面の解説

ライダーの荒い息づかいと、ホームズが指でテーブルの縁をたたく音だけが響く長い沈黙が続く。やがてホームズは立ち上がってドアを開け放ち、「出ていけ!」と言う。ライダーは神の恵みを祈る言葉を残し、階段を駆け下りて通りへ走り去る。

表現・文法のポイント

broken only by his heavy breathing
break silence は「沈黙を破る」。過去分詞 broken が a long silence を後ろから説明し、「〜によってだけ破られる沈黙」となる。only があるので、ほかには何の音もしなかったことが強調される。
threw open the door
throw open は「(ドアや窓を)さっと開け放つ」。本来は throw the door open の語順だが、目的語が長いときや勢いを出すときに open を前に出す。ホームズの決然とした動きが伝わる。
Heaven bless you!
May Heaven bless you! の may が省かれた祈りの言い方で、「あなたに神のお恵みがありますように」。Heaven は God を直接言うのを避けた言い方。動詞が原形の bless なのは祈願の文だからだ。
no more words were needed
no more words は「それ以上の言葉」を否定したもので、「もう言葉はいらなかった」。ホームズの No more words.(もう何も言うな)を、語り手がそのまま受けて言い直している。

全文の対訳

There was a long silence, broken only by his heavy breathing and by the measured tapping of Sherlock Holmes' finger-tips upon the edge of the table. Then my friend rose and threw open the door.

長い沈黙が続いた。それを破るのは、彼の荒い息づかいと、シャーロック・ホームズがテーブルの縁を指先で規則正しくたたく音だけだった。やがて友は立ち上がり、ドアをさっと開け放った。

"Get out!" said he.

「出ていけ!」と彼は言った。

"What, sir! Oh, Heaven bless you!"

「えっ、旦那!ああ、旦那に神様のお恵みがありますように!」

"No more words. Get out!"

「もう何も言うな。出ていけ!」

And no more words were needed. There was a rush, a clatter upon the stairs, the bang of a door, and the crisp rattle of running footfalls from the street.

そして、それ以上の言葉はいらなかった。駆け出す気配、階段を下りるけたたましい音、ドアがばたんと閉まる音がして、それから通りを走っていく足音が乾いた響きを立てた。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • clatter(クラター)… がたがた・がちゃがちゃという音難
  • rattle(ラトル)… (続けて鳴る)かたかた・がたがたという音・がたがた鳴る難
  • footfalls(フットフォールズ)… 足音(footfall の複数形)難
  • finger-tips(フィンガーティップス)… 指先(fingertips の古い綴り)
  • breathing(ブリーズィング)… 息をしている・呼吸
  • measured(メジャード)… 規則正しい・慎重な・測った(measure の過去形・過去分詞)
  • silence(サイレンス)… 沈黙・静けさ
  • tapping(タッピング)… 軽くたたきながら・軽くたたいている

次の場面:事件のあとで After It All

長い沈黙のあと、夜のベイカー街の居間にはまた静けさが戻る。暖炉の火だけが静かに燃えている。ホームズは陶製のパイプに手を伸ばし、ワトソンを相手に、この奇妙な事件の幕引きについての自分の考えを、ゆっくりと語り始める。