Scene 21 · Notes

解説 場面 21「手紙の真偽」

この場面の解説

国王はアイリーン・アドラーに危うい手紙を書いたことを認める。ホームズは秘密の結婚や法的な書類が無いことを確かめ、手紙の筆跡など偽造だと言えば済むと一蹴する。

表現・文法のポイント

how is she to prove their authenticity
be to 〜 は予定・義務・可能などを表し、how is she to 〜? で「どうやって〜できるというのか」という反語的な問いになる。authenticity は「本物であること、真正性」で、手紙だけでは証拠にならないとほのめかしている。
Then I fail to follow your Majesty.
fail to 〜 は「〜できない」、follow はここで「(話に)ついていく、理解する」。直訳は「陛下の話についていけません」で、I don't understand を遠回しに、丁寧に言った形である。
There is the writing.
writing はここでは「書いたもの」よりも「筆跡」の意味。手紙は王自身の手で書かれたので、筆跡が動かぬ証拠になるという主張だ。handwriting と言い換えると分かりやすい。
Pooh, pooh! Forgery.
pooh は相手の言葉を「ばかばかしい」とはねつける軽蔑の間投詞で、二度重ねて強調している。続く Forgery.(偽造だ)は「偽造だと言えば済む」の意味で、国王に対しても遠慮のないホームズの態度がよく出ている。

背景・時代

秘密の結婚
王族の結婚は国家間の問題でもあり、身分の低い相手との結婚は公に認められにくかった。ホームズが秘密の結婚や証明書の有無を確かめるのは、法的に国王を縛る証拠があるかどうかを見極めるためである。

全文の対訳

"Precisely so. But how—"

「まさにそのとおりだ。だが、どうして――」

"Was there a secret marriage?"

「秘密の結婚をなさったのですか」

"None."

「していない」

"No legal papers or certificates?"

「法的な書類や証明書の類いは?」

"None."

「ない」

"Then I fail to follow your Majesty. If this young person should produce her letters for blackmailing or other purposes, how is she to prove their authenticity?"

「それでしたら、陛下のおっしゃることが分かりかねます。この若い女性が、ゆすりやその他の目的で手紙を持ち出したとしても、それが本物だとどうやって証明するのでしょう」

"There is the writing."

「筆跡がある」

"Pooh, pooh! Forgery."

「ばかばかしい。偽造ですよ」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • forgery(フォージェリー)… 偽造(品)・偽物難
  • certificates(サティフィキッツ)… 証明書(複数)
  • blackmailing(ブラックメイリング)… ゆすり・恐喝すること
  • authenticity(オーセンティスィティ)… 本物であること・真正性・信頼性
  • precisely(プリサイスリ)… その通り・正確に
  • purposes(パーパスィズ)… 目的(複数)・用途
  • majesty(マジェスティ)… 陛下(your Majesty で呼びかけ)・威厳
  • produce(プロデュース)… 取り出す・提示する・生産する・作り出す

次の場面:動かぬ証拠 The Photograph

国王は手紙が本物である証として、専用の便箋や自分の印章を挙げる。だがホームズは、盗まれた、まねられたと言えば済むと一つずつ退ける。最後に国王が挙げたのは一枚の写真で、しかもそこには国王とアイリーン・アドラーが二人並んで写っているという。ホームズもさすがに、これはまずいと声を上げる。