Scene 23 · Notes

解説 場面 23「若き日の過ち」

この場面の解説

ホームズは国王の軽率さを指摘し、国王は当時まだ若い皇太子だったと弁解する。買い取りも断られていると知ったホームズは、それなら盗み出すまでだと平然と言ってのける。

表現・文法のポイント

I was mad—insane.
ダッシュ(—)で mad を insane と言い直し、意味を強めている。mad はイギリス英語ではまず「気が狂った、正気でない」の意味で使われ、若い頃のふるまいを恥じる国王の気持ちが表れている。
You have compromised yourself seriously.
compromise oneself は「(軽率なふるまいで)自分の評判や立場を危うくする」。前の場面の compromise one of the reigning families と同じ動詞で、国王自身が招いた危機であることを突きつけている。
I am but thirty now
but はここでは「しかし」ではなく only と同じ「ほんの、たった」という副詞で、やや古風で文語的な用法だ。今でもまだ三十歳なのだから、当時はもっと若かったと弁解している。
Stolen, then.
It must be stolen, then. の省略形で、then は「それなら」。直前の It must be bought. と対になり、買えないなら盗むしかないと短く言い切る。探偵が窃盗を平然と提案する意外さがこの場面の面白さだ。

全文の対訳

"I was mad—insane."

「私はどうかしていたのだ――正気ではなかった」

"You have compromised yourself seriously."

「ご自分のお立場をひどく危うくなさいましたね」

"I was only Crown Prince then. I was young. I am but thirty now."

「あの頃はまだ皇太子にすぎなかった。若かったのだ。今でもまだ三十なのだ」

"It must be recovered."

「取り戻さなくてはなりません」

"We have tried and failed."

「試みたが、うまくいかなかった」

"Your Majesty must pay. It must be bought."

「陛下がお支払いになるほかありません。買い取るほかありません」

"She will not sell."

「あの女は売ろうとしない」

"Stolen, then."

「では、盗み出すまでです」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • compromised(コンプロマイズド)… (評判・立場を)危うくした(compromise の過去分詞)・妥協した
  • recovered(リカヴァード)… 取り戻された(recover の過去分詞)・回復した
  • majesty(マジェスティ)… 陛下(your Majesty で呼びかけ)・威厳
  • insane(インセイン)… 正気でない・狂気の
  • failed(フェイルド)… 失敗した(fail の過去形・過去分詞)
  • stolen(ストウルン)… 盗まれた(steal の過去分詞)
  • crown(クラウン)… クラウン(旧英国の5シリング硬貨)・王冠

次の場面:五度の失敗 Five Attempts

国王はすでに五度も写真の奪還を試みていた。雇った者に家を荒らさせ、旅の荷物を横取りし、待ち伏せまでさせたが、写真は影も形もない。ホームズはこれをなかなか面白い問題だと笑い、国王にとがめられる。そこでホームズは、彼女がその写真で何をするつもりなのかを尋ねる。