Scene 11 · Notes

解説 場面 11「髪を切る条件」

この場面の解説

男はさらに、屋敷へ来る前に髪を短く切るよう求める。豊かな栗色の髪を失えないとハンターが断ると、男は妻の希望なので必須だと言い、採用を取りやめる。

表現・文法のポイント

could hardly believe my ears
「自分の耳を疑った」。服装や座る場所より重い要求へ急に進んだ驚きを表す慣用表現である。
settles the matter
「それで話は決着する」。髪を切らないなら交渉は終わりだと、男が選択の余地を狭める言い方である。

全文の対訳

"'Or to cut your hair quite short before you come to us?'

「『では、当家へ来る前に髪をすっかり短く切ってほしいと言われても?』

"I could hardly believe my ears. As you may observe, Mr. Holmes, my hair is somewhat luxuriant, and of a rather peculiar tint of chestnut. It has been considered artistic. I could not dream of sacrificing it in this offhand fashion.

「私は自分の耳を疑いました。ホームズさんにもお分かりのとおり、私の髪はかなり豊かで、少し変わった栗色をしています。美しい髪だと言っていただくこともありました。こんな唐突な話で、それを失うことなど考えられませんでした。

"'I am afraid that that is quite impossible,' said I. He had been watching me eagerly out of his small eyes, and I could see a shadow pass over his face as I spoke.

「『申し訳ありませんが、それだけはとてもできません』と私は答えました。男は小さな目で私を食い入るように見つめており、私がそう言うと、その顔に影が差すのが分かりました。

"'I am afraid that it is quite essential,' said he. 'It is a little fancy of my wife's, and ladies' fancies, you know, madam, ladies' fancies must be consulted. And so you won't cut your hair?'

「『残念ながら、それはどうしても必要なのです』と男は言いました。『妻のちょっとした望みでしてね。ご婦人の望みというものは、奥さん、尊重しなければなりません。それでも髪は切らないと?』

"'No, sir, I really could not,' I answered firmly.

「『はい。どうしても切れません』と私はきっぱり答えました。

"'Ah, very well; then that quite settles the matter. It is a pity, because in other respects you would really have done very nicely. In that case, Miss Stoper, I had best inspect a few more of your young ladies.'

「『ああ、よろしい。では、この話はそれで終わりです。残念ですね。ほかの点では、あなたなら実に申し分なかったのですが。そういうことなら、ストーパーさん、ほかの若いご婦人を何人か見せていただくのがよさそうだ』

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • fancies(ファンスィーズ)… 気のせい・空想(複数)難
  • sacrificing(サクリファイスィング)… 犠牲にすること
  • considered(コンスィダード)… 考えた・検討した
  • luxuriant(ラグジュアリアント)… 豊かに茂る
  • essential(イセンシャル)… どうしても必要な・欠かせない
  • consulted(コンサルティッド)… 相談した・参照した
  • somewhat(サムウォット)… いくらか・やや
  • peculiar(ピキューリアー)… 独特な・奇妙な・特有の

次の場面:冷たい応対 A Cold Dismissal

交渉のあいだ黙って書類を見ていたストーパー嬢は、好条件を断ったハンター嬢に苛立ちを隠さない。名前を登録したままにするかと冷たく尋ね、今後よい口が見つかる見込みも薄いと言い放つ。ハンター嬢は重い気持ちで紹介所を後にする。