Scene 09 · Notes

解説 場面 9「名簿と観察」

この場面の解説

ホームズは名簿を受けて、性格の推測に使った根拠を説明する。さらに杖の歯形から犬の大きさを推し量り、最後には巻き毛のスパニエルだと言い切る。

表現・文法のポイント

As to the adjectives
「形容詞についていえば」と話題を限定する表現。ここでは愛想のよさ、野心のなさ、うっかりした性格を指し、その根拠が続く。
too broad in my opinion for a terrier
too ... for ...は、その基準に当てはめるには程度が過ぎるということ。テリアには広すぎ、マスティフには十分広くないという、歯形の間隔の比較で犬の大きさを絞っている。

全文の対訳

"No mention of that local hunt, Watson," said Holmes with a mischievous smile, "but a country doctor, as you very astutely observed. I think that I am fairly justified in my inferences. As to the adjectives, I said, if I remember right, amiable, unambitious, and absent-minded. It is my experience that it is only an amiable man in this world who receives testimonials, only an unambitious one who abandons a London career for the country, and only an absent-minded one who leaves his stick and not his visiting-card after waiting an hour in your room."

「地元の狩猟会のことは書いていないね、ワトソン」とホームズはいたずらっぽく笑った。「だが、きみの実に鋭い観察どおり、田舎の医師ではある。私の推論にはかなり根拠があったと思う。形容詞については、記憶に間違いがなければ、愛想がよく、野心がなく、うっかり者と言った。私の経験では、この世で感謝の贈り物をもらうのは愛想のよい人だけだし、ロンドンでの経歴を捨てて田舎へ行くのは野心のない人だけだ。そして、人の部屋で一時間待ったあげく、名刺ではなく杖を残していくのは、うっかり者だけだ」

"And the dog?"

「犬は?」

"Has been in the habit of carrying this stick behind his master. Being a heavy stick the dog has held it tightly by the middle, and the marks of his teeth are very plainly visible. The dog's jaw, as shown in the space between these marks, is too broad in my opinion for a terrier and not broad enough for a mastiff. It may have been—yes, by Jove, it is a curly-haired spaniel."

「主人の後ろでこの杖をくわえて運ぶ習慣がある。重い杖だから、犬は真ん中をしっかりくわえていた。その歯の跡が、非常にはっきり残っている。その跡の間隔が示す犬の顎は、私の考えではテリアにしては幅が広すぎ、マスティフにしては狭すぎる。おそらく、そうだ、これは驚いた、巻き毛のスパニエルだ」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • astutely(アステュートリー)… 鋭く・抜け目なく難
  • inferences(インファレンスィズ)… 推論・推理による結論・推論・推理(inference の複数形)難
  • amiable(エイミアブル)… 人のよい・愛想のよい難
  • testimonials(テスティモウニアルズ)… 感謝を示す贈り物・推薦状難
  • visiting-card(ヴィズィッティングカード)… 名刺難
  • mastiff(マスティフ)… マスティフ犬難
  • jove(ジョウヴ)… (By Jove で)これは驚いた・おや(ローマ神話の神ジュピター)難
  • absent-minded(アブサントマインディッド)… うっかりした・上の空の

次の場面:階段の足音 A Step on the Stair

杖の持ち主をめぐる説明の途中で、ホームズは窓辺へ歩み寄っている。その声に強い確信を感じたワトソンは、どうしてそこまで言えるのかと問いかける。二人が考えてきた訪問者は、まだ部屋に姿を見せていない。朝の推測と来客の気配が近づく。