Scene 35 · Notes

解説 場面 35「言葉を確かめる」

この場面の解説

犬の足跡という言葉にワトソンは震え、ホームズは詳しい確認を始める。医師は、遺体から離れた跡に気づいたのは伝説を知っていたためだと話し、牧羊犬の跡ではないとする。

表現・文法のポイント

What was the use?
モーティマーの返答で、「話したところで何の役に立つのか」という修辞疑問。使い道を質問しているのではなく、話しても意味はなかったと述べる。
had I not known this legend
if I had not known ...のifを省いた倒置。「この伝説を知らなかったなら」と、実際とは異なる過去を仮定し、自分も跡を気にしなかっただろうと言う。

全文の対訳

I confess at these words a shudder passed through me. There was a thrill in the doctor's voice which showed that he was himself deeply moved by that which he told us. Holmes leaned forward in his excitement and his eyes had the hard, dry glitter which shot from them when he was keenly interested.

その言葉を聞いて、私は身震いした。医師の声には震えがあり、自分で語る内容に、本人も深く心を動かされていると分かった。ホームズは興奮して身を乗り出し、その目には、強く興味を引かれた時に放つ、硬く乾いた光が宿っていた。

"You saw this?"

「ご自分で見たのですか?」

"As clearly as I see you."

「あなたのお姿が見えるのと同じくらい、はっきりと」

"And you said nothing?"

「それで、何も言わなかった?」

"What was the use?"

「言って何になりますか」

"How was it that no one else saw it?"

「ほかの誰も見なかったのは、なぜですか」

"The marks were some twenty yards from the body and no one gave them a thought. I don't suppose I should have done so had I not known this legend."

「跡は遺体から二十ヤードほど離れていて、誰も気にとめなかったのです。あの伝説を知らなければ、私も気にしなかったと思います」

"There are many sheep-dogs on the moor?"

「荒れ地には牧羊犬がたくさんいるのでは?」

"No doubt, but this was no sheep-dog."

「もちろん、ですが、あれは牧羊犬ではありません」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • excitement(イクサイトメント)… 興奮・わくわくする気持ち
  • sheep-dogs(シープドッグズ)… 牧羊犬たち
  • sheep-dog(シープドッグ)… 牧羊犬
  • confess(コンフェス)… 率直に認める・打ち明ける・告白する・白状する
  • shudder(シャダー)… 身震い・ぞっとすること
  • glitter(グリッター)… きらめき
  • thrill(スリル)… ぞくっとする感覚・身震い・興奮
  • leaned(リーンド)… 体を傾けた・もたれた・(leaned backで)背にもたれた・(あごを手に)のせた・もたれた・寄りかかった・身を乗り出した

次の場面:夜の道の様子 The Path at Night

医師が見た足跡についての聞き取りが続く。大きさだけを論じても、現場での位置やその夜の条件が分からなければ比べられない。ホームズは一つずつ質問を変え、館の並木道と天候を頭に描こうとしている。モーティマーは自分の記憶をたどって答える。