Scene 76 · Notes

解説 場面 76「馬車が去ったあと」

この場面の解説

ホームズは自分の不手際を悔しがり、成功とともに失敗も記録するようワトソンに言う。客が初日から尾行されていたと考えた理由も説明する。

表現・文法のポイント

set it against my successes
成功だけでなく失敗も並べ、釣り合いの取れた記録にしてほしいということ。ホームズは今回の取り逃がしを隠そうとしていない。
How else could it be known
「そうでなければ、どうして分かるだろう」という修辞疑問。ホテルの選択がすぐ知られたことから、尾行を推定している。

全文の対訳

"There now!" said Holmes bitterly as he emerged panting and white with vexation from the tide of vehicles. "Was ever such bad luck and such bad management, too? Watson, Watson, if you are an honest man you will record this also and set it against my successes!"

「何ということだ」とホームズは苦々しく言った。車の波から息を切らして出てきた顔は、いら立ちで青ざめていた。「こんな不運があるか。しかも、こんな手際の悪さとは。ワトソン、ワトソン、きみが正直な人間なら、これも記録して、私の成功と並べてくれ」

"Who was the man?"

「あの男は誰だ?」

"I have not an idea."

「まるで分からない」

"A spy?"

「探りを入れる者か?」

"Well, it was evident from what we have heard that Baskerville has been very closely shadowed by someone since he has been in town. How else could it be known so quickly that it was the Northumberland Hotel which he had chosen? If they had followed him the first day I argued that they would follow him also the second. You may have observed that I twice strolled over to the window while Dr. Mortimer was reading his legend."

「聞いたことから、ヘンリー卿が町へ来てからずっと、誰かにぴったり尾行されているのは明らかだった。そうでなければ、選んだのがノーサンバランド・ホテルだと、あんなに早く知れるはずがない。初日に尾行していたなら、二日目にもするだろう、と考えたんだ。モーティマー医師が伝説を読んでいる間に、私が二度、窓へ歩いていったのに気づいたかもしれないね」

"Yes, I remember."

「ああ、覚えている」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • management(マネジメント)… 手際・取り扱い・管理
  • successes(サクセスィズ)… 成功(複数)
  • bitterly(ビタリー)… ひどく・激しく・苦々しく
  • vexation(ヴェックセイション)… いら立ち・悔しさ
  • vehicles(ヴィーイクルズ)… 乗り物・車両
  • shadowed(シャドウド)… 尾行された・影を落とした
  • observed(オブザーヴド)… 気づいた・観察した・認められた・目に留まった・述べた(会話の挿入句)・観察した・注意して見た(observe の過去分詞)
  • strolled(ストロウルド)… ぶらぶら歩いた・散歩した

次の場面:後をつける方法 A Way of Following

ヘンリー卿の行動を知る誰かがいるという見方から、ホームズは通りの人影を警戒していた。だが、先ほどの馬車は二人の目を避けるように去っている。歩いて見張る場合と車を使う場合はどう違うのか。移動中の会話は、相手が取った方法へ進んでいく。