Scene 178 · Notes

解説 場面 178「低く広がる霧」

この場面の解説

グリンペン沼の白い濃霧が屋敷へ迫る。ホームズは、霧が道を覆う前にサー・ヘンリーが出てこなければ作戦も命も危ういと焦る。

表現・文法のポイント

banked itself up like a wall
霧が壁のように厚く積み重なって見える様子だ。
could have disarranged my plans
作戦の段取りを崩しかねない、唯一の自然条件が霧だという意味だ。

全文の対訳

"I cannot think where she is."

「どこにいるのか、見当もつかない」

I have said that over the great Grimpen Mire there hung a dense, white fog. It was drifting slowly in our direction and banked itself up like a wall on that side of us, low but thick and well defined. The moon shone on it, and it looked like a great shimmering ice-field, with the heads of the distant tors as rocks borne upon its surface. Holmes's face was turned towards it, and he muttered impatiently as he watched its sluggish drift.

グリンペンの大沼地の上に濃い白霧が垂れ込めていたことは、すでに述べた。それはゆっくりと私たちの方へ漂い、こちら側に低くも厚く、くっきりとした壁のように堆積していた。その上に月が輝き、霧は巨大なきらめく氷原のようで、遠くの岩峰の頂が表面に浮かぶ岩のように見えた。ホームズは顔をそちらへ向け、霧がのろのろと漂う様子を見ながら、いらだたしげにつぶやいた。

"It's moving towards us, Watson."

「私たちの方へ動いている、ワトソン」

"Is that serious?"

「それは深刻なのか」

"Very serious, indeed—the one thing upon earth which could have disarranged my plans. He can't be very long, now. It is already ten o'clock. Our success and even his life may depend upon his coming out before the fog is over the path."

「極めて深刻だ。私の計画を狂わせられる、この世で唯一のものだ。彼が出てくるまで、もうそう長くはかからないはずだ。もう十時になっている。成功するかどうか、いや、彼の命さえ、霧が道を覆う前に出てくるかどうかにかかっている」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • banked(バンクト)… 取り囲まれた・積み上げられた難
  • ice-field(アイスフィールド)… 氷原難
  • sluggish(スラギッシュ)… のろのろした・活気のない難
  • disarranged(ディスアレインジド)… 乱した・狂わせた難
  • impatiently(インペイシェントリー)… もどかしげに・いらいらして
  • shimmering(シマリング)… きらめく・かすかに揺らめく
  • direction(ディレクション)… 分野・方面、対象・方向・(推理の)向かう方向・結論の行く先・方角・指示
  • drifting(ドリフティング)… 漂っている・流れている

次の場面:待ちながら見渡す Watching While They Wait

空には星と月があり、地上では霧が広がっている。ホームズと仲間たちは屋敷の近くで待ち続ける。見える範囲がどう変わるか、ワトソンは周囲を見渡そうとしている。待っている間にも周囲の状態は変わり、さっきまで見えていた場所を、何度も見直すことになる。