Scene 86 · Notes

解説 場面 86「会った日のこと」

この場面の解説

ローラはチャールズ卿と直接会った回数も少ないと話す。事情を知った経路を問われると、ステイプルトンが仲介したと即答し、その説明はワトソンの知る事実とも一致する。

表現・文法のポイント

do good by stealth
「人知れず善い行いをする」。stealthは隠密行動だが、ここでは慈善を誇らず秘密に行う控えめな人柄を表す。
bore the impress of truth
「真実の特徴を帯びていた」。印刷の跡ではなく、話に真実らしい手触りがあったという比喩。

全文の対訳

"No."

「いいえ」

"Have you ever met him?"

「直接会ったことはありますか」

"Yes, once or twice, when he came into Coombe Tracey. He was a very retiring man, and he preferred to do good by stealth."

「はい。一、二度、あの方がクーム・トレーシーへいらしたときに。たいへん控えめな方で、人知れず善い行いをなさるのを好んでいました」

"But if you saw him so seldom and wrote so seldom, how did he know enough about your affairs to be able to help you, as you say that he has done?"

「しかし、それほどたまにしか会わず、手紙もめったに書かなかったのなら、あなたが言うような援助ができるほど、どうして事情を詳しく知っていたのですか」

She met my difficulty with the utmost readiness.

彼女はこの難問に、少しも動じず答えた。

"There were several gentlemen who knew my sad history and united to help me. One was Mr. Stapleton, a neighbour and intimate friend of Sir Charles's. He was exceedingly kind, and it was through him that Sir Charles learned about my affairs."

「私の悲しい身の上を知り、力を合わせて助けてくださった紳士が何人かいました。その一人が、チャールズ卿の隣人で親しい友人だったステイプルトンさんです。とても親切な方で、チャールズ卿が私の事情を知ったのも、あの方を通じてでした」

I knew already that Sir Charles Baskerville had made Stapleton his almoner upon several occasions, so the lady's statement bore the impress of truth upon it.

チャールズ・バスカヴィル卿が何度かステイプルトンを施しの仲介役にしていたことは私も知っていたので、彼女の説明には真実味があった。

"Did you ever write to Sir Charles asking him to meet you?" I continued.

「チャールズ卿に、会ってほしいと手紙を書いたことはありますか」と私は続けた。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • stealth(ステルス)… 人知れず行うこと難
  • readiness(レディネス)… すぐ応じる態度・用意難
  • exceedingly(イクスィーディングリー)… きわめて・非常に難
  • almoner(アルモナー)… 施しを分配する人難
  • difficulty(ディフィカルティー)… 困難・苦労
  • neighbour(ネイバー)… 隣の人・隣人
  • statement(ステイトメント)… 記述、発言・供述・発言・記述・説明・話・陳述・声明
  • retiring(リタイアリング)… 引っ込み思案の・控えめな

次の場面:もう一度尋ねる Asking Once More

ワトソンが確かめたいのは、チャールズ卿へ面会を求めたことがあるかどうかだ。質問を聞いた夫人の反応を見ながら、言葉を変えず、本人の答えを待とうとしている。聞きたいことに正面から触れようとする医師と、返事をする女性とが、机を挟んで向き合っている。