Scene 07 · Notes

解説 場面 7「魚の入れ墨」

この場面の解説

ホームズは、手首の魚の入れ墨が中国独特の技法で彫られていること、時計の鎖に中国の硬貨が下がっていることから、中国に行ったことを見抜いたと説明する。ウィルソン氏は大笑いし、種を聞けば大したことではなかったと言う。

表現・文法のポイント

could only have been done in China
could have+過去分詞は過去のことについての推量で、「~でありえた」。only が加わると「中国で彫られたとしか考えられない」となり、断定に近い推理になる。入れ墨の技法から場所を特定する、ホームズらしい論法だ。
contributed to the literature of the subject
contribute to ~ は「~に寄稿する、貢献する」。literature は「文学」ではなく「(ある分野の)文献、論文」の意味。the subject は入れ墨のことで、ホームズは入れ墨について論文まで書いている、と言っているのだ。
Well, I never!
驚きを表す決まり文句で、「いやはや、これは驚いた」。後ろに heard of such a thing などが省略された形とされる。イギリスの口語で、今ではやや古風な響きがある。
there was nothing in it after all
nothing in it は「そこには大したことは何もない、種も仕掛けもない」。after all は「結局のところ」。説明を聞いた途端に感心が冷めてしまう、ウィルソンの正直な反応がよく出ている。

背景・時代

入れ墨(tattoo)
19世紀には船乗りの間で入れ墨が広く行われ、寄港地の彫り師に彫ってもらうことも多かった。中国や日本の彫り師の腕は西洋でも評判だった。船大工だったウィルソンが中国で入れ墨を入れたのも自然なことだ。

全文の対訳

"Well, but China?"

「なるほど、でも中国は?」

"The fish that you have tattooed immediately above your right wrist could only have been done in China. I have made a small study of tattoo marks and have even contributed to the literature of the subject. That trick of staining the fishes' scales of a delicate pink is quite peculiar to China. When, in addition, I see a Chinese coin hanging from your watch-chain, the matter becomes even more simple."

「右の手首のすぐ上に彫ってある魚の入れ墨は、中国でしか彫れないものだ。私は入れ墨について少しばかり研究していて、その分野の文献に寄稿したことさえあるのだよ。魚のうろこを淡い桃色に染めるあの技法は、まったく中国独特のものだ。そのうえ、時計の鎖に中国の硬貨がぶら下がっているのを見れば、話はなおさら簡単になる」

Mr. Jabez Wilson laughed heavily. "Well, I never!" said he. "I thought at first that you had done something clever, but I see that there was nothing in it after all."

ジェイベズ・ウィルソン氏は重たげに大笑いした。「いやはや、驚いた!」と彼は言った。「最初は何かうまい手でも使いなさったのかと思いましたが、種を明かせば何でもないことだったんですなあ」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • watch-chain(ウォッチチェイン)… 懐中時計の鎖難
  • immediately(イミーディエットリ)… すぐ(そば)に・直ちに
  • contributed(コントリビューティッド)… 寄稿した・貢献した(contribute の過去形・過去分詞)
  • literature(リテラチャー)… (ある分野の)文献・論文・文学
  • tattooed(タトゥード)… 入れ墨をした・(入れ墨を)彫った(tattoo の過去形・過去分詞)
  • staining(ステイニング)… 染めること・染みをつけること(stain の ing 形)
  • delicate(デリカット)… 繊細な
  • peculiar(ピキューリア)… 独特な・奇妙な・特有の

次の場面:例の広告 The Advertisement

種を明かすと、ウィルソン氏はとたんに感心しなくなった。ホームズはワトソンに、説明しすぎると自分のささやかな評判が台なしになると冗談まじりにぼやく。そして例の広告はまだかとウィルソン氏を促す。太い指で新聞の欄を押さえたウィルソン氏は、すべてはこれから始まったと言う。