Scene 67 · Notes

解説 場面 67「なぜ今夜か」

この場面の解説

組合の事務所が閉じられたのは、トンネルが完成した証拠だった。発見や金塊の移送を恐れて急ぐはずで、逃げるのに二日稼げる土曜日が最適だったため、ホームズは今夜と読んだ。ワトソンはその推理の見事さに心から感嘆する。

表現・文法のポイント

in other words
in other words は「言いかえれば、つまり」。直前の内容を、別の言葉で分かりやすく言い直すときに使う。ここでは「ウィルソンがいてもいなくても構わなくなった」ことを、「トンネルが完成した」と言い直している。
so long a chain
so + 形容詞 + a + 名詞 の語順で、「これほど長い鎖」という意味。such a long chain と言うのと同じだが、やや改まった響きになる。ワトソンはホームズの推理の筋道を、輪がつながった鎖にたとえている。
every link rings true
link は「鎖の輪」。ring true は「本物らしく響く、本当らしく聞こえる」で、硬貨を落とし、その音で本物かどうかを確かめたことから来ている。推理のどの段階も確かだ、という称賛になる。

背景・時代

土曜日と週末(Saturday)
当時のロンドンの銀行は、日曜日には営業しなかった。土曜の夜に金庫を破れば、月曜の朝に行員が来るまで気づかれにくい。ホームズの言う「逃げるための二日」とは、この週末のことである。

全文の対訳

"And how could you tell that they would make their attempt to-night?" I asked.

「それにしても、やつらが今夜決行すると、どうして分かったんだい?」と私は尋ねた。

"Well, when they closed their League offices that was a sign that they cared no longer about Mr. Jabez Wilson's presence—in other words, that they had completed their tunnel. But it was essential that they should use it soon, as it might be discovered, or the bullion might be removed. Saturday would suit them better than any other day, as it would give them two days for their escape. For all these reasons I expected them to come to-night."

「そうだね、組合の事務所を閉めたのは、もうジェイベズ・ウィルソン氏がいようがいまいが構わなくなったというしるしだ――言いかえれば、トンネルが完成したということさ。だが、見つかるおそれもあれば、金塊がよそへ移されるおそれもあるから、すぐに使うことがどうしても必要だった。土曜日なら逃げるのに二日の余裕ができるから、ほかのどの曜日よりも都合がいい。こうした理由がそろっていたから、今夜来ると見込んだのだ」

"You reasoned it out beautifully," I exclaimed in unfeigned admiration. "It is so long a chain, and yet every link rings true."

「見事な推理だ」と私は心から感嘆して叫んだ。「これほど長い鎖なのに、輪のひとつひとつがどれも確かなんだからね」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • bullion(ブリアン)… 金塊・地金(金や銀のかたまり)難
  • unfeigned(アンフェインド)… 偽りのない・心からの難
  • admiration(アドミレイション)… 感嘆・称賛
  • essential(イセンシャル)… どうしても必要な・欠かせない
  • exclaimed(イクスクレイムド)… 叫んだ・声を上げた
  • presence(プレズンス)… (そこに)あること・存在・出席
  • reasoned(リーズンド)… 筋道立てて考えた・推理した(reason の過去形・過去分詞。reason oneself out of で「考えた末に〜をやめる」)
  • attempt(アテンプト)… 試みる・企てる・試み

次の場面:退屈しのぎ Escape from Ennui

事件の筋道を最後まで語り終え、ワトソンから心からの賛辞を受けたホームズ。だが当の本人は、手柄を誇るでもなく、あくびまじりに答える。彼にとって、この奇妙な事件は何だったのか。夜明けのベイカー街で交わされる短いやりとりで、赤毛組合の物語は幕を閉じる。