Scene 22 · Notes

解説 場面 22「依頼人の帰り」

この場面の解説

ヘレンは町で用事を済ませ、正午の列車で屋敷へ戻ると言う。ホームズは午後の早い時間に伺うと伝え、朝食を勧めるが、彼女は断る。悩みを打ち明けて心が軽くなったと言い、黒いヴェールをおろして部屋を出ていく。

表現・文法のポイント

now that I am in town
now that ~ は「今や~なので」と、現在の状況を理由にする接続表現。in town は「町に出ている」で、田舎暮らしのヘレンがロンドンに出ていることを指す。そのついでに用事を片づけたいという意味。
so as to be there in time for your coming
so as to ~ は「~するように」という目的を表す。in time for ~ は「~に間に合って」。your coming は動名詞で、「あなた方が来ること」。屋敷でホームズたちを迎える段取りを述べている。
Will you not wait and breakfast?
breakfast は動詞で「朝食をとる」。wait and breakfast は二つの動詞を and でつないだ形。Will you not ~? は丁寧な勧誘で、Won't you ~? の古風な言い方にあたる。
My heart is lightened already
lighten は「軽くする」。受動態の is lightened で、胸の重荷が軽くなったことを表す。since 以下の confided my trouble to you は「悩みをあなたに打ち明けた」。confide ~ to ... の形。

背景・時代

黒いヴェール(black veil)
19世紀の女性は、外出時に顔をヴェールで覆うことが多く、喪中は黒を着た。ヘレンは黒衣で、厚い黒のヴェールを下ろして顔を隠し、客の素性を知られないよう静かに帰る。

全文の対訳

"I have one or two things which I would wish to do now that I am in town. But I shall return by the twelve o'clock train, so as to be there in time for your coming."

「町に出ている今のうちに、いくつか済ませたい用事があります。けれど十二時の列車で帰り、あなた方がいらっしゃるのに間に合うようにしておきます」

"And you may expect us early in the afternoon. I have myself some small business matters to attend to. Will you not wait and breakfast?"

「では、午後の早いうちにこちらから伺うと思ってください。私自身も、片づけておきたいちょっとした用事がある。朝食をご一緒していきませんか?」

"No, I must go. My heart is lightened already since I have confided my trouble to you. I shall look forward to seeing you again this afternoon." She dropped her thick black veil over her face and glided from the room.

「いいえ、行かなければなりません。悩みをあなたにお話ししたら、もう心が軽くなりました。今日の午後、またお会いできるのを楽しみにしています」彼女は厚い黒のヴェールを顔の上におろし、すべるように部屋から出ていった。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • lightened(ライトゥンド)… 軽くなった・明るくなった難
  • confided(コンファイディッド)… 打ち明けた難
  • glided(グライディッド)… すべるように動いた・滑空した難
  • veil(ヴェイル)… ベール・覆い

次は第 2 章「義父の来訪」

依頼人が帰ってまもなく、戸口に大男が現れる。ストーク・モランのグリムズビー・ロイロット博士だった。脅しの言葉を残して去った博士をよそに、ホームズは遺言を調べに出かけ、午後にはワトソンを連れて汽車でサリー州へ向かう。