Scene 25 · Notes

解説 場面 25「ロイロット博士」

この場面の解説

大男は自分がストーク・モランのロイロット博士だと名乗り、義理の娘があとをつけられてここに来たと決めつけ、何を話したのかと迫る。ホームズは丁寧に椅子をすすめ、季節外れの寒さやクロッカスの話ではぐらかし、博士はますます激昂する。

表現・文法のポイント

you have the advantage of me
相手が自分を知っているのに、自分は相手を知らないときの丁寧な言い方で、「そちらは私をご存じのようだが、私はあなたを存じません」の意。ホームズの静かな皮肉がにじむ。
I will do nothing of the kind.
nothing of the kind は「そんなことは決してない」。will は強い拒絶の意志を表す。ホームズの勧めた席を、荒々しく突っぱねるロイロット博士の態度がよく出ている。
Pray take a seat.
pray は古風で丁寧な「どうぞ」で、please に近い。take a seat は「席につく」。血相を変えた相手に落ち着いて椅子をすすめるホームズの余裕を示す。
the crocuses promise well
promise は「~の見込みがある」で、crocuses promise well は「クロッカスは今年よく咲きそうだ」。核心から話をそらすためにホームズが持ち出した、わざとらしい世間話だ。

背景・時代

クロッカス(crocus)
早春に咲く花で、英国では春の訪れを告げる花として親しまれている。まだ寒い時季にクロッカスの話をするのは、怒鳴り込んだ相手をはぐらかすホームズ流の皮肉になっている。

全文の対訳

"Which of you is Holmes?" asked this apparition.

「貴様らのどちらがホームズだ」とその怪物じみた男は尋ねた。

"My name, sir; but you have the advantage of me," said my companion quietly.

「私の名ですよ、あなたのことは存じませんがね」と連れは静かに言った。

"I am Dr. Grimesby Roylott, of Stoke Moran."

「おれはグリムズビー・ロイロット博士、ストーク・モランの者だ」

"Indeed, Doctor," said Holmes blandly. "Pray take a seat."

「ほう、博士でしたか」とホームズは愛想よく言った。「どうぞおかけください」

"I will do nothing of the kind. My stepdaughter has been here. I have traced her. What has she been saying to you?"

「そんなことをするものか。おれの義理の娘がここへ来ただろう。あとをつけてきたのだ。あれは貴様に何を話した」

"It is a little cold for the time of the year," said Holmes.

「この時季にしては少し寒いですね」とホームズは言った。

"What has she been saying to you?" screamed the old man furiously.

「あれは貴様に何を話したのだ」と老人は猛り狂ってわめいた。

"But I have heard that the crocuses promise well," continued my companion imperturbably.

「ですが、クロッカスは今年よく咲きそうだと聞いていますよ」と連れは平然と続けた。

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • apparition(アパリション)… (突然現れた)怪物のような姿・幽霊・幻難
  • blandly(ブランドリー)… 穏やかに・平然と難
  • crocuses(クロウカスィズ)… クロッカス(早春に咲く花)難
  • imperturbably(インパーターバブリー)… 平然と・少しも動じずに・落ち着き払って難
  • stepdaughter(ステップドーター)… 義理の娘・継娘
  • advantage(アドヴァーンティッジ)… (take advantage of で)利用すること・利点・有利
  • companion(カンパニオン)… 仲間・相棒
  • furiously(フューリアスリー)… 猛り狂って・激しく・烈火のごとく

次の場面:おせっかいなホームズ Holmes the Meddler

ロイロット博士は、はぐらかされたと知って怒りをあらわにする。鞭を振りかざして一歩進み、ホームズを悪党呼ばわりしてののしりはじめる。ホームズのほうは椅子に座ったまま、顔色一つ変えず、むしろ楽しげに相手を眺めている。