Scene 26 · Notes

解説 場面 26「おせっかいなホームズ」

この場面の解説

博士は鞭を振って「おせっかい」「出しゃばり」「ヤードの役人風の小者」とホームズを罵る。ホームズは罵られるたびに笑みを深め、ついには愉快そうに笑って、出ていくときは戸を閉めてほしいと頼む。

表現・文法のポイント

You put me off, do you?
put off は「はぐらかす、かわす」。文末の do you? は肯定文のあとに付けて、怒りや皮肉を込めて念を押す付加疑問で、「そういうつもりか」と迫る調子になる。
Holmes, the Scotland Yard Jack-in-office!
jack-in-office は「役人風を吹かす小者」という軽蔑語。ホームズは民間の探偵なので、警察と同一視されるのは侮辱であり、博士の悪罵が見当違いなのがおかしい。
there is a decided draught
decided は「はっきりした、明白な」で、decided draught は「はっきり感じるほどの隙間風」。draught は英国式の綴りで、米国では draft と書く。戸を閉めさせる口実でもある。
Holmes chuckled heartily.
chuckle は「くすくす笑う」。heartily は「心から」。罵倒されても動じず、むしろ楽しんでいるホームズの余裕を表す。直前の My friend smiled. からの笑いの段階的な変化も読み取れる。

背景・時代

スコットランド・ヤード(Scotland Yard)
ロンドン警視庁の通称。ホームズは民間の顧問探偵で、警察とは協力もするが別の立場にある。そのため警察の手先と呼ばれるのは、ホームズには不本意な侮辱だった。

全文の対訳

"Ha! You put me off, do you?" said our new visitor, taking a step forward and shaking his hunting-crop. "I know you, you scoundrel! I have heard of you before. You are Holmes, the meddler."

「ふん!はぐらかす気か」と新たな客は、一歩踏み出して狩猟用の鞭を振りかざした。「貴様のことは知っているぞ、この悪党め!前から噂は聞いている。貴様はホームズ、おせっかい野郎だ」

My friend smiled.

友は微笑んだ。

"Holmes, the busybody!"

「ホームズ、出しゃばり屋め!」

His smile broadened.

彼の笑みが広がった。

"Holmes, the Scotland Yard Jack-in-office!"

「ホームズ、スコットランド・ヤードの役人風を吹かす小者め!」

Holmes chuckled heartily. "Your conversation is most entertaining," said he. "When you go out close the door, for there is a decided draught."

ホームズは心から愉快そうに笑った。「あなたの話は実に面白いですね」と彼は言った。「出ていくときは戸を閉めてください、かなりの隙間風ですから」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • hunting-crop(ハンティングクロップ)… 狩猟用の鞭・乗馬用の短い鞭難
  • scoundrel(スカウンドレル)… 悪党・ならず者・卑劣な男難
  • meddler(メドラー)… おせっかい屋・余計な口出しをする人難
  • busybody(ビズィボディー)… 出しゃばり屋・おせっかいな人難
  • jack-in-office(ジャックインオフィス)… 役人風を吹かす小者・威張り散らす小役人難
  • draught(ドラーフト)… 隙間風・すきま風・(飲み物の)ひと飲み難
  • entertaining(エンターテイニング)… 愉快な・面白い
  • broadened(ブロードンド)… 広がった・広くなった

次の場面:火かき棒 The Poker

戸を閉めろと言われても、ロイロット博士は引き下がらない。言いたいことを言ってから出ていくと言い放ち、ホームズに警告を浴びせる。そして暖炉の火かき棒に目をやり、力を見せつけようと一歩踏み出す。ホームズは動じず、その動きを静かに見守る。