Scene 37 · Notes

解説 場面 37「紐の根もと」

この場面の解説

ホームズが紐を引くと、それは呼び鈴につながっておらず、ただの偽物だった。紐は通風用の小さな穴のすぐ上の鉤に留めてあるだけだった。ホームズは、通風口を隣の部屋に開けるとは建築屋はなんと愚かだと皮肉を言う。

表現・文法のポイント

Why, it's a dummy
dummy は「偽物、模造品」。ここは名詞を述語にして「見せかけだけで役に立たない代物だ」と言っている。文頭の Why, は驚いたときの「おや」「なんと」という軽い間投詞。
it is not even attached to a wire
not even 〜 は「〜さえ…ない」。be attached to 〜 は「〜に取り付けられている、つながっている」。wire は針金で、鈴の仕掛けまで伸びているはずのもの。
There are one or two very singular points about this room.
one or two 〜 は「一つ二つの、いくつかの」。singular は「単数の」ではなく「奇妙な、並外れた」の意味。控えめに言いつつ、強い違和感を伝える言い方だ。
what a fool a builder must be to open a ventilator into another room
what a 〜! の感嘆文。must be は強い推量で「〜に違いない」。to open 以下は判断の根拠を示す不定詞で「〜するとは」。皮肉を込めた、ホームズらしい言い回しだ。

全文の対訳

"Why, it's a dummy," said he.

「おや、これは偽物だ」とホームズは言った。

"Won't it ring?"

「鳴らないのですか?」

"No, it is not even attached to a wire. This is very interesting. You can see now that it is fastened to a hook just above where the little opening for the ventilator is."

「ああ、針金にさえつながっていない。これは実に面白い。ほら、通風口の小さな開口部のすぐ上にある鉤に結んであるのがおわかりでしょう」

"How very absurd! I never noticed that before."

「なんてばかげたことでしょう!今まで気づきませんでした」

"Very strange!" muttered Holmes, pulling at the rope. "There are one or two very singular points about this room. For example, what a fool a builder must be to open a ventilator into another room, when, with the same trouble, he might have communicated with the outside air!"

「実に妙だ!」とホームズは紐を引っぱりながらつぶやいた。「この部屋には、ごく奇妙な点がいくつかある。たとえば、同じ手間をかければ外の空気に通じさせられるのに、通風口を隣の部屋に開けるとは、その建築屋はなんと愚かなのだろう!」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • ventilator(ヴェンティレイター)… 通風口・換気口・換気装置難
  • communicated(コミューニケイティッド)… (部屋などが)つながっていた・伝えた難
  • attached(アタッチト)… つながれた・取り付けられた
  • fastened(ファースンド)… 留められた・固く閉じられた
  • muttered(マタード)… つぶやいた・ぶつぶつ言った
  • singular(スィンギュラー)… 奇妙な・独特の
  • builder(ビルダー)… 建築業者・大工
  • absurd(アブサード)… ばかげた・不合理な

次の場面:通風口 The Ventilator

呼び鈴の紐を調べ終えたホームズは、その留め具のすぐ下にある小さな通風口へ話を向ける。ストーナーさんによれば、それも最近になって作られたものだという。やがて三人は、隣にあるロイロット博士の部屋に入り、ホームズは調度を見て回りはじめる。