Scene 48 · Notes

解説 場面 48「あのベッドのこと」

この場面の解説

ホームズは、ベッドが床に留められていたことを指摘し、あれでは動かせず、通風口と紐に対して常に同じ位置にあったはずだと言う。ワトソンはホームズの言わんとすることがぼんやり見えてくる。ホームズは、医者が道を踏み外せば最悪の犯罪者になると語り、夜までパイプで気を休めようと誘う。

表現・文法のポイント

It was clamped to the floor
clamp は「締め金で留める」で、ここではベッドが床に固定されていたことを指す。was clamped は受け身。ホームズは、ベッドの位置が動かせないという一点に注目している。
When a doctor does go wrong
does は動詞 go を強める強調の do で、「本当に道を踏み外したとき」の意味。go wrong は「悪い方向へ進む」。医者の知識と度胸が悪事に使われる怖さを、あとに続けて語っている。
we shall be able to strike deeper still
still は比較級 deeper を強めて「それでもなお深く」。strike deeper は直前の「この男はさらに深く打つ」を受け、「こちらはそれより深く打つ」と言い返す、ホームズらしい対抗の表現だ。
for goodness' sake
for goodness' sake は「お願いだから、後生だから」と頼んだり、いら立ちを表したりする決まり文句。goodness は God の婉曲表現で、強い言葉を避けた言い方だ。

背景・時代

パーマーとプリチャード(Palmer and Pritchard)
いずれも19世紀の英国で凶悪な殺人を犯して処刑された医師。ホームズは、医者が悪に走ると手口も巧妙になる例として二人の名を挙げている。

全文の対訳

"It was clamped to the floor. Did you ever see a bed fastened like that before?"

「床に留め付けてあったのだ。あんなふうに固定されたベッドを、前に見たことがあるかね?」

"I cannot say that I have."

「ないと思うね」

"The lady could not move her bed. It must always be in the same relative position to the ventilator and to the rope—or so we may call it, since it was clearly never meant for a bell-pull."

「その女性はベッドを動かせなかった。ベッドは常に、通風口と紐、まあそう呼んでおくが、それに対して同じ位置になければならなかった。あれは明らかに呼び鈴の紐のつもりで作られたものではないからね」

"Holmes," I cried, "I seem to see dimly what you are hinting at. We are only just in time to prevent some subtle and horrible crime."

「ホームズ」と私は叫んだ。「きみが何をほのめかしているのか、ぼんやり見えてきた気がする。何か巧妙で恐ろしい犯罪を防ぐのに、ぎりぎり間に合ったんだ」

"Subtle enough and horrible enough. When a doctor does go wrong he is the first of criminals. He has nerve and he has knowledge. Palmer and Pritchard were among the heads of their profession. This man strikes even deeper, but I think, Watson, that we shall be able to strike deeper still. But we shall have horrors enough before the night is over; for goodness' sake let us have a quiet pipe and turn our minds for a few hours to something more cheerful."

「巧妙で恐ろしい、そのとおりだ。医者が道を踏み外したら、最も悪質な犯罪者になる。度胸があり、知識もあるのだから。パーマーとプリチャードは、医者仲間でも指折りの人物だった。この男はさらに深く打ち込んでくるが、ワトソン、我々はそれよりさらに深く打てると思う。だが夜が明けるまでに恐ろしい思いはたっぷり味わうだろう。後生だ、静かにパイプをくゆらせて、数時間だけでももっと楽しいことに気を向けようじゃないか」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • clamped(クランプト)… 留め付けられた・固定された難
  • ventilator(ヴェンティレイター)… 通風口・換気口・換気装置難
  • bell-pull(ベルプル)… 呼び鈴の引き紐難
  • profession(プロフェッション)… (専門的な)職業・同業者たち
  • criminals(クリミナルズ)… 犯罪者・悪党(criminal の複数形)
  • knowledge(ノリッジ)… 知識
  • fastened(ファースンド)… 留められた・固く閉じられた
  • relative(レラティヴ)… 親類・親戚・相対的な

次の場面:合図の明かり The Signal Light

九時に屋敷の明かりが消え、二人は暗い部屋で待ち続ける。十一時ちょうど、真ん中の窓にひとつ明かりがともり、ホームズが合図だと言って立ち上がる。二人は宿を出て、暗い夜道を屋敷へ向かう。出がけに、ホームズは宿の主人にひとこと断りを入れる。