Scene 17 · Notes

解説 場面 17「道中の説明」

この場面の解説

ホームズは黙って付き合ってくれるワトソンに感謝する。滞在先の夫人へ何と話せばよいか悩みつつ、リーに着くまでに事件を説明すると言う。

表現・文法のポイント

gift of silence
黙っていられる才能という、ホームズらしい褒め方。贈り物を受け取ったという話ではない。考える時間を妨げずに隣に座っていたワトソンを、同行者としてありがたいと感じていることが続く言葉から分かる。
get the end of it into my hand
ここでのitはthreadを受け、たくさんある糸の端を手に取れないという比喩。情報はあるのに、解決へ進む糸口をつかめない状態を表す。事件が物理的な糸や裁縫についての話だと解釈しない。

全文の対訳

"You have a grand gift of silence, Watson," said he. "It makes you quite invaluable as a companion. 'Pon my word, it is a great thing for me to have someone to talk to, for my own thoughts are not over-pleasant. I was wondering what I should say to this dear little woman to-night when she meets me at the door."

「きみには黙っていられるすばらしい才能があるね、ワトソン」と彼は言った。「おかげで同行者としてこの上なくありがたい。いや本当に、話せる相手がいるのは助かるよ。一人で考えていても、あまり楽しいことばかりではないからね。今夜、あの気の毒な奥さんが戸口で迎えてくれたら、何と言おうかと考えていたんだ」

"You forget that I know nothing about it."

「私は何も事情を知らないことを、きみは忘れているよ」

"I shall just have time to tell you the facts of the case before we get to Lee. It seems absurdly simple, and yet, somehow I can get nothing to go upon. There's plenty of thread, no doubt, but I can't get the end of it into my hand. Now, I'll state the case clearly and concisely to you, Watson, and maybe you can see a spark where all is dark to me."

「リーへ着くまでに、事件の事実を話す時間はちょうどあるだろう。ばかばかしいほど単純に見えるのに、どうにも考えを進める足場が見つからない。糸はいくらでもあるのに、その端をつかめないんだ。さあ、ワトソン、明確に簡潔に話すから、私には真っ暗な所できみには何か光が見えるかもしれない」

"Proceed, then."

「では、話してくれ」

難易度の高い単語 (☆ で覚えたい単語に入れる)

  • invaluable(インヴァリュアブル)… 非常に貴重な・計り知れないほど役に立つ難
  • pon(ポン)… ('Pon my wordで)いやはや・まったく(upon my wordの略)難
  • over-pleasant(オウヴァープレザント)… あまりに楽しい・すこぶる快い
  • companion(カンパニオン)… 仲間・相棒
  • concisely(コンサイスリー)… 簡潔に
  • thoughts(ソーツ)… 考え・物思い
  • absurdly(アブサードリー)… ばかばかしいほど・不合理に
  • silence(サイレンス)… 沈黙・静けさ・黙らせる・口を封じる(動詞)・沈黙・静けさ

次は第 2 章「馬車の中の話」

リーへ向かう馬車の中で、ホームズは捜査の経緯をワトソンへ話そうとしている。探しているのは、郊外に家庭を持つセントクレア氏だ。一見単純に思えるのに、確かな糸口をつかめないという。ワトソンは事情を知るため、当人の暮らしと失踪に至る説明に耳を傾ける。