第 1 章(I)嵐の夜の来客The Five Orange Pips

九月の終わり、激しい風雨がロンドンを包む。妻の留守にベイカー街へ泊まっているワトソンは、ホームズと暖炉を挟んで夜を過ごしている。そこへ呼び鈴が鳴る。こんな時刻に誰が訪ねてきたのか。二人は本と記録から顔を上げ、部屋の外へ耳を澄ませる。

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  1. 01記録を開く Opening the Recordsワトソンは、ホームズと関わった事件の記録を読み返している。机の上には、長い年月にわたって書き留めた数々の覚え書きがある。奇妙な出来事や興味深い事情には事欠かないが、どの話を選んで読者に伝えるべきか。語りは、その選択をめぐる思いから始まる。
  2. 02一八八七年 A Year of Cases一八八七年の記録にも、さまざまな事件の見出しが残されている。ワトソンは、それらの名を挙げながら、いずれ語る機会が来るかもしれない話に思いを向ける。その数ある記録の中から、今回の物語へと筆を進める前に、ホームズの仕事の広がりを振り返る。
  3. 03秋分の嵐 The Equinoctial Storm九月も終わりに近づき、秋分の嵐がロンドンを襲っている。風は窓を鳴らし、雨は一日じゅう激しく打ちつける。妻が実家を訪ねているあいだ、ワトソンはベイカー街の古い部屋に泊まっている。暖炉を挟み、ホームズは記録を整理し、ワトソンは海の物語を読む。
  4. 04夜の呼び鈴 The Evening Bell嵐の音に包まれたベイカー街で、呼び鈴が鳴る。ワトソンは本から顔を上げ、こんな夜に誰が来るのかとホームズに尋ねる。友人なのか、それとも仕事の相談なのか。二人が言葉を交わす部屋の外では、風雨がなお強く、夜の静けさをかき消している。
  5. 05濡れた外套 The Wet Coat部屋に入ってきたのは、身なりの整った若い男だ。傘からは雨が滴り、長い防水外套は嵐の強さを物語っている。ランプに照らされた顔には、深い心配の影がある。ホームズは客を迎え、まず濡れた外套と傘を預かろうとする。青年は暖かな部屋を見回している。
  6. 06助言と助力 Advice and Help青年は、助言だけでなく助力も求めてベイカー街へ来たという。ホームズの仕事を知ったきっかけは、ある知人から聞いた話だった。暖炉の前で始まった会話は、探偵がどのような相談を引き受けるのかへと移っていく。青年はホームズの返事を待ちながら、言葉を続ける。
  7. 07一族の相談 A Family Matter青年の期待に応じながらも、ホームズは自分の仕事について控えめに答える。やがて話は、いま目の前の客が持ち込んだ相談へ向かう。青年の一族には、説明のつかない出来事が重なっているらしい。ホームズは椅子を火のそばへ寄せるよう青年に勧め、最初から順に話すよう促す。
  8. 08おじの来歴 The Uncle's Past青年はジョン・オープンショーと名乗り、自分だけの事情では説明できない問題だと話し始める。相談の背景を知るには、一族の昔へさかのぼる必要があるという。父とおじはどのような暮らしをしてきたのか。ホームズとワトソンは、ジョンが語る家族の来歴に耳を傾ける。
  9. 09少年時代 The Boyhood Yearsジョンの回想は、少年だったころのおじとの暮らしへ進む。ほかの人との付き合いを避けるおじも、ジョンには違う態度を見せたという。屋敷では何を任され、どのように過ごしていたのか。青年は、長く身近にいたからこそ知っている家の様子を、一つずつ語っていく。
  10. 10海の向こうの便り A Letter from Abroadおじが手紙を受け取ることは、ふだんほとんどなかった。ジョンは、一八八三年三月のある朝の食卓を思い出す。そこには外国の切手を貼った封書が置かれていた。遠い土地からの便りを前に、おじは何を考えたのか。暖炉の前の二人は、青年の回想の続きを聞く。
  11. 11三つの文字 Three Letters朝の食卓で起きたことを見て、少年ジョンはおじに問いかける。封筒に隠された意味は、まだ分からない。おじの強い反応と、内側に記された三つの文字が、ジョンの心に残る。青年はその場にあった物と、おじの行動を順にたどり、ホームズたちへ伝えていく。
  12. 12呼ばれた部屋 The Summons Upstairsジョンは、おじに言われた用事を済ませ、やがて部屋へ呼ばれる。屋敷には弁護士も訪ねてきている。朝の食卓での出来事から続く、おじの一連の行動には、どんな理由があるのか。部屋に入った少年の目に何が映ったのかを、青年は落ち着いて語り続ける。
  13. 13閉ざされた扉 Behind Closed Doors弁護士を迎えた日のことは、ジョンの記憶に深く刻まれている。けれども、その場で起きたことの意味は分からないままだ。日がたつにつれて、少年はおじの暮らしを見守り続ける。ふだんの屋敷の静けさと、人を遠ざけるおじの様子を、青年は改めて思い返す。
  14. 14庭の奥 At the End of the Gardenおじについての話は、ある夜の出来事へと進む。ジョンは、屋敷で暮らしていたころの記憶をたどり、順を追って説明する。ホームズは、それまでの話を注意深く聞いている。出来事のつながりを考えるには、何が、いつ起きたのかを正確に確かめなければならない。