第 1 章(I)車窓の事件The Boscombe Valley Mystery

妻と朝食をとっていたワトソンに、ホームズから旅の誘いが届く。二人を乗せた列車は西へ向かう。車内で語られるのは、池のそばで起きた死と、そこに居合わせた息子への疑いである。新聞記事を手に、ホームズとワトソンは、同じ証言をそれぞれの目で読み進める。

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  1. 01朝食の電報 A Telegram at Breakfastある朝、ワトソン夫妻が朝食の席に着いていると、女中がホームズからの電報を届ける。西部の事件について同行を求める知らせで、出発時刻も記されている。妻は行くつもりかと尋ねるが、ワトソンには診療の予定がある。すぐには返事を決めかねている。
  2. 02駅で落ち合う Meeting at the Stationワトソンの妻は、仕事を代わってもらい、気分を変えてはどうかと勧める。出発までの時間は短く、行くならすぐに支度をしなければならない。旅慣れたワトソンはかばんを用意して駅へ向かう。ホームでは、灰色の旅用マントを着たホームズが歩いている。
  3. 03列車の客室 In the Railway Carriage列車の客室を二人で使うホームズとワトソン。ホームズは新聞の山を調べ、メモを取りながら考えている。レディングを過ぎるころ、話題はこれから向かう事件へ移る。新聞を読んでいないワトソンに、ホームズは記事を通じて把握した事情を話そうとする。
  4. 04単純な事件 A Simple Case単純であるのに難しいというホームズの言い方を、ワトソンは矛盾のように感じる。ホームズは事件の特徴と捜査の難しさについて説明を続ける。やがて話は、新聞が伝える具体的な嫌疑へ移っていく。まだ現場を見ていない探偵は、何を確かな事実として扱うのか。
  5. 05谷の暮らし Life in the Valleyホームズはボスコム谷の土地と、そこに暮らす二つの家族について説明する。広い土地を持つターナーと、農場を借りるマッカーシーは、ともに海外で暮らした経験があるという。ワトソンがこれから聞く事件を理解するため、家族構成や近隣との付き合いが語られる。
  6. 06池へ続く道 The Path to the Pool事件が起きた日の説明が始まる。午後、マッカーシーはハザリーの家を出て、谷の小川が広がる池へ向かったという。家から池までは短い道のりだが、途中で彼を見た人がいる。ホームズは時刻と行き先を示しながら、通りがかりの人たちの証言を順にたどる。
  7. 07林にいた少女 The Girl in the Wood猟場番の証言に続き、池のそばにいた少女の話が取り上げられる。周囲を林に囲まれた水辺で、門番の娘は花を摘んでいた。そこで目にした父子の様子を、ホームズが新聞記事に沿って伝える。少女が家へ帰ってからの出来事も、調べの中で語られている。
  8. 08証拠の向き A View of the Evidence父子をめぐる証言を聞いたワトソンは、息子への嫌疑はきわめて重いと感じる。ホームズは状況証拠というものについて、別の角度から話し始める。近所には無実を信じる人もいるらしい。この事件がレストレードを経て自分の所へ来た経緯も説明する。
  9. 09友への一例 An Example for Watsonホームズは、明白に見える事実にも人を欺くところがあると話す。自分とレストレードの方法の違いを述べるうち、話題をワトソンの日常へ向ける。寝室の窓の位置について、ごく当然のように言い出すホームズ。現場を見る前の列車内で、身近な例が持ち出される。
  10. 10観察の筋道 Observation and Inferenceホームズは、ワトソンの身近な習慣を挙げて観察の筋道を説明する。几帳面な友人について普段から知っていることと、目の前に見えるものを結びつけるのだ。やがて二人は再び事件へ戻る。ホームズは新聞の検視審問の記事から、小さな点を取り上げようとする。
  11. 11言葉の受け取り方 Reading His Words逮捕された青年が口にした一言を、ワトソンは自白と受け取る。だが、その直後には無実を訴える言葉もあった。列車の中で、ホームズは人が不利な状況に置かれたときの態度について語る。同じ発言をめぐり、二人の見方が分かれている。
  12. 12記事を広げて Opening the Report青年の言葉をどう受け取るかについて、ホームズとワトソンの意見は一致しない。ワトソンは、今度は本人の説明を知りたいと尋ねる。ホームズは持参した新聞の束を探り、地元紙の記事を差し出す。列車の隅で、ワトソンはその陳述を読み始める。
  13. 13青年の陳述 The Young Man's Statement地元紙には、ジェームズ・マッカーシー自身が語った出来事が載っている。留守から戻った日の朝、父が外出する姿を見た青年は、そのあと銃を持って池へ向かった。目撃者の話と本人の説明は、どこで重なるのか。ワトソンは記事の順に、その足取りを追う。
  14. 14引き返した道 The Way Back青年の陳述は、池のそばで父と言い争ったあとのことへ移る。彼は気性の激しい父から離れ、農場へ戻る道を歩き始めた。だが、途中で背後から聞こえた声が、青年を再び池へ向かわせる。何を見て、どのように助けを求めたのかが語られる。
  15. 15検視官の問い The Coroner's Questions記事には、陳述に続いて検視官と証人のやり取りが記されている。父が死ぬ間際に何かを話したのか、最後の口論は何が原因だったのか。検視官は青年に答えを求める。出来事を説明してきた青年は、さらに踏み込んだ質問を受けることになる。
  16. 16尋問の続き Further Questions検視官は、父と息子の間の合図について、声が聞こえた時点を確かめようとする。さらに陪審員も問いを挟み、父のもとへ戻ったときに何を見たかを尋ねる。青年の記憶に残るものと、はっきりとは言えないもの。その違いが尋問の中で問われていく。
  17. 17距離を確かめる Checking the Distances証人への質問は、池のそばで目にしたものの位置と、その後の行動へ移る。遺体からどのくらい離れていたか、森の端まではどれほどか。青年が助けを求めるまでの間をたどるため、尋問する側は場所と距離を一つずつ言葉にして確かめていく。
  18. 18読み終えたあと After the Statementワトソンは記事を読み終え、検視官が青年に厳しい見方を示した点を取り上げる。父の声、答えられなかった質問、最期の言葉。列車の中で二人は、証言のどこを重く見るべきかを話し合う。やがてホームズは新聞から別の本へと手を伸ばす。